全国スーパーマーケット協会 横山清会長がSMTSで語ったこと
セルフサービス導入から70年、変化するSMTSの意義
日本に「セルフサービス」という革新的な販売方法が導入されて70年近くになる。
当時は、店主や従業員が、お客さん一人ひとりに対応し、商品を提供する対面接客販売で商売が成り立っていたが、そこに米国から「お客さん自らが商品を選び、レジで精算する」手法が持ち込まれた。当初は「これで本当に商売が成り立つのか。会社が倒産してしまうのではないか」という危惧さえあったが、いまや、何をもって「セルフサービス」というのか、その意味するところを気にしない世代が食品スーパー業界の中心を担っている。また、レジも電子レジとなり、現在では大量の顧客購買データを収集できるPOSレジが、当たり前のように使われている。
SMTSは、食品スーパー黎明期の1964年に「セルフサービスフェア」の名称で始まった。その後、SMTSは単なる展示商談会の場にとどまることなく、食品スーパーにとって欠かすことのできない商品や店舗設備の最新のトレンドが集まる場として、多くの業界関係者に支えられてきた。
とくに今回は、ウィズコロナ、アフターコロナの新しい生活様式に対応したトレードショーとして、来場者、出展者、主催者が一丸となり安全対策を講じ、安心な商談環境を提供できるように努めている。商品の展示、商談、セミナーなども、リアルの場に加えて、バーチャルの空間で利用できるものも用意した。
「時代が変わっても、商売の基本は人間相手」
営業力のない地方の生産者や中小のメーカーにとって、SMTSへの出展は販路開拓のチャンスである。地方の生産者や中小のメーカーの担い手が減れば、食品スーパーの店頭から、その作物、その商品がなくなり、地域の食文化は衰退することになる。
今後のさらなる成長・発展に向けてどんなことができるか、SMTSの果たす役割は、今後一段と高まる。全国各地の「地域産品を集めた展示を見ながら、商談ができる機会」は、SMのバイヤーにとっても、出展者にとっても貴重な場である。
コロナ禍で「ネットスーパーが伸びている」「アマゾンが伸びている」と言われている。EC(ネット通販)は、ボタンを押せば、商品がすぐに届く世界。コンタクトレス、キャッシュレス、時短にもつながる便利な買い物スタイルだ。しかしいくらECが便利でも、リアル店舗に行けば、「やっぱりリアルは違うよね」となるのも事実だ。どんなに時代が変わっても、商売の基本は人間相手。これも絶対に忘れてはいけないことだ。
とはいえ、数年後にはオンラインであるか、オフラインかに関係なく、間違いなく、リアルの店舗とともに、アフターコロナの世界がやってくる。いち早く、その道筋を見つけ、オンラインとオフラインの融合により、リアルの店を進化させる。その提案を、近未来像として提示していきたい。
新型コロナウイルス感染拡大問題は心配だが、第55回SMTSが新しい世界へのスタートラインとして、後々、歴史に残るトレードショーになることを願い、「命の防衛隊」の一員として、第55回SMTS開催に向けての言葉としたい。