地方SMとして自主路線に回帰、基本を徹底し営業力を磨く!=近商ストア 中井 潔 社長
「美味安心」を導入 近鉄のグループ力も活用
──商品面での重点施策は何ですか。
中井 商品面では、競合店にはない商品を積極的に取り入れていくことに力を入れています。当社の事業規模でプライベートブランド(PB)を持つのは現実的に難しいため、オリジナル商品については、地元メーカーや工場と連携しながら開発することも検討しています。
最近、ほかのSM企業のPBの販売を始めました。山梨県に本部を置くいちやまマート(三科雅嗣社長)さんのPB「美味安心」です。「美味安心」は安心・安全、健康に配慮した商品です。協力をお願いして当社の一部店舗で「美味安心」を販売しています。お客さまからの評判は上々で、今後、取扱店舗を拡大していきます。
また、社長を兼務する近鉄リテーリングは、駅ナカ事業の一環でコンビニエンスストア(CVS)の「ファミリーマート」の加盟店を運営しています。その関係で、ファミリーマートのPB「ファミリーマートコレクション」を一部の店舗で、今年5月から試験的に販売しています。これもほかのSMでは買えない商品で、菓子などがよく売れています。
──SMの共同仕入れグループに参加する選択肢はありますか。
中井 商品の仕入れはあくまで独自路線でいく方針です。自社に加え、近鉄グループの企業が持つ商品も導入していきたいと考えています。
たとえば、近鉄リテーリングでは、東京風うなぎ料理を出す「江戸川」という飲食店を10店舗経営しています。そこでは、国内産地から直送したうなぎを使っているのですが、近商ストアも共同で仕入れ、SMで販売しています。
同じく近鉄リテーリングが展開する「百楽」というレストランとも連携し、そこで提供している中華総菜を、当社の総菜部門で販売することも計画しています。本格的な味の総菜は当社の独自商品になります。こうした近鉄グループの持つリソースを活用することで、差別化につなげていきたいと考えています。
高齢化の進行に対応し新業態の開発も検討
──出店政策については、どのように考えていますか。
中井 これから2?3年は、新規出店は行わずに、おもに既存店舗の改装を進める考えです。
来年、当社はSM1号店を出してから60周年を迎えます。どの店舗もお客さまに親しまれていますが、老朽化が進んだ店舗も多いため、計画的に手入れをしているところです。16年2月期は、奈良県の生駒店、真美ヶ丘店、東生駒店の改装を終えていますが、夏以降も順次、既存店舗の活性化を図っていきます。
──新規出店についてはどのように考えていますか。
中井 近鉄沿線でいい物件があれば、新規出店を検討します。ただし、考えなければならないのは、今後、どのようなスタイルのSMを出すかということです。現在、当社では、50歳以上のお客さまが多くを占めています。今後、さらに高齢化が進むことを考えると、高齢のお客さまに使いやすい店舗は何かという点から、新業態での出店も視野に入れる必要があります。それが、移動販売、あるいはミニSMになるのかわかりません。近鉄グループが展開する既存業態との協業になるかもしれません。いずれにしても、当社の次代の事業戦略を練るうえで、重要な課題だと認識しています。
──一部店舗で実施しているネットスーパーは拡大しますか。
中井 奈良県、京都府の計4店でサービスを提供していますが、利用件数が大きく伸びているわけではありません。どれくらいの需要があるか、今は測りかねているところです。これに対して、来店して買物された商品を宅配する「商品宅配」サービスは、お客さまから非常に好評です。周辺に坂道が多い学園前店(奈良県)では、このサービスを利用されるお客さまが多く、売上の約11%を占めています。
これから、高齢化が進むなかで、どのようなサービスが喜ばれるのか。ネットスーパーも含めて、提供すべきサービスを検討していきたいと思います。