利益激減のなかコロナ禍のライブコマースで起死回生 8か月で売上10倍にしたサトーカメラ、成功の秘訣
成功の秘訣は“1対1”
なぜ、サトーカメラのライブコマースはここまでヒットしたのだろうか。その秘訣は、「店頭販売と接客のプロである、実際の店舗スタッフ1名だけで行う」(佐藤氏)ことにあるという。
ライブ配信でありがちなパターンとして、複数人が出演し、主に商品説明を行う人、質問をする人、場を盛り上げる人、のような役割分担で進行するものがある。しかしこのスタイルは、「よほどのプロを連れてこないと茶番劇のようになり、見ていられないものになってしまう」(佐藤氏)という。さらに、このスタイルは視聴者の存在と関係なく番組が進行する。ちょうどテレビを眺めているような感覚に陥り、ただ見流すものになってしまいがちだ。
そこでサトーカメラが取ったのが、前述の「実際の店舗スタッフが1名だけで行う」という方法だ。出演者同士で話すのではなく、スタッフが1人でカメラに向かって語りかける。これは一人ひとりの視聴者から見ると「自分に話しかけてくれている、接客されている」という感覚になる効果がある。また、台本がないため、視聴者からの質問や「(商品の)ここを拡大してよく見せて欲しい」といった要求にもフレキシブルに対応しやすい。この方法が受け、今では毎日のようにライブ配信を行い視聴者は常時200〜300人、2時間の配信で約2000人が訪れるという。
また、サトーカメラのライブコマースには、「今までの客層とは異なる層の購入者が多い」という特徴がある。実店舗のメーン顧客層は20〜40代の女性だが、ライブコマースで商品を購入するのは30〜40代の男性が多い。ただ購入するだけでなく、サポートや“繋がり”を重視しがちな女性客とサトーカメラの実店舗は相性がよかった。しかし、自分で商品を比較厳選し、狙ったものを手に入れること自体が目的の男性客は、今まで家電量販店などに流れていた層だ。コロナ禍で実店舗を訪れることが難しくなったことで、新たな顧客層にもライブコマースを通じてサトーカメラを知ってもらい、さらに従来の顧客層以外にもサトーカメラ流の“接客”が有効だということがわかったのは、大きな成果だった。(第3回に続く)