ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営7 ネット時代を生き抜く戦略とは
ECに怯えるSCとネット流通の捉え方
では、なぜ、SC事業者はECの伸びに怯えるのか。それはSCの収入がテナント売上高に連動する売上歩合賃料の形態を採用しているからに他ならない。
テナント(店舗)売上の低下はSCの賃料収入の減少となるため消費がECに移ることを脅威と感じる。
しかし、SCがEC同様、モノを流通させるプラットフォームであれば利便性の高いECに購買が移るのは当然と言えば当然である。
このECの伸びという社会変化に今後どう対峙するか、それをECの成長に従って見ていくと次のようになる。
【第一段階】
過去「アパレルはネットに移らない」と言われていた。アパレルは実物を見てフィッティングをしないと買わないものという固定概念のより発せられたものだが、その当時は、リアル店舗に対してネット流通の影響は限定的と考えられていた。
【第2段階】
2008年のスマホの登場によりECは急速に伸びていく。その状況を見たSC事業者は、「リアルvsネット」と対立軸として捉え、売上を奪われる脅威としてECを受け止めるようになる。
雑誌などもリアルとECの強み弱み、メリットデメリットなどを整理した記事も多く対立軸として扱うことが多かったのがこの時期である。
【第3段階】
徐々にネットでの流通がモノだけでは無く、SNSなどにより集客機能を持ち始めたことからO toO(Online to Offline)やクリック&モルタルと表現し、ネットからリアルへの誘導を考え始める。しかし、これらの取り組みは残念ながら奏功することは少なかった。
【第4段階】
いよいよネットの伸長を無視できなくなり、「ネットとリアルの融合」や「オムニチャネル」を考え始め多くの施策を実施した。しかし、この段階でもまだリアルとネットは別個のものとして捉えられていた。リアルとネットは併存するという理解であるが、残念ながらリアルとネットは併存ではない。
では、リアルとECを今後どうやって捉えたらいいのか。筆者は、「リアル店舗はネットの一部」になると考えている。(第5段階)。
【第5段階】
考えてみてほしい。今、商品が生産され消費者に渡る過程で介在するSCM、SPA、EC、SNS、これら全てネットの中で動いている。発注から生産、物流から在庫、販売からアフター、すべてがデータとしてネットの中で完結する。
この時、リアルの店舗の役割は、ネット流通の中で消費者にモノを受け渡す場所という一機能に過ぎないのである。
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