「来年度から新規出店を再開する」長期目標は売上1000億円=近商ストア 粕本源秀 社長

聞き手:阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
構成:森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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大阪府、奈良県、京都府で事業展開する、近商ストア(大阪府)。競争が激化する中、楽しい買物環境や独自商品の提供などにより、競合店との差別化を図っている。店舗の多くは駅近や駅ナカといった恵まれた立地にあり、今後は小型店の出店にも取り組むという。新社長の粕本源秀氏に事業展望、戦略を聞いた。

物販や小売分野を長く経験

──今年6月、近商ストアの新社長に就任しました。粕本社長の経歴を教えてください。

かすもと・もとひで●大阪府出身。1986年慶應義塾大学卒、同年、近畿日本鉄道(現・近鉄グループホールディングス)入社。15年近鉄リテーリング取締役。16年近商ストア専務。18年近商ストア社長就任(現任)。

粕本 1986年、近畿日本鉄道に入社し3年間、鉄道の現場で働いた後、近鉄グループの企業を含め、企画や人事等、さまざまな職務を経験しました。そのなか初めて販売に関する業務に携わったのは92年。当時、グループが力を入れていたテーマパーク事業で、運営部隊の一員として物販と飲食を勉強しました。また2009年から8年近く、駅ナカでの物販や飲食を手掛ける近鉄リテーリングにも在籍、これまで物販や小売分野でも長く仕事をしてきました。

──さて、近商ストアを取り巻く競争環境を、いかに認識していますか。

粕本 厳しさが増しているという実感です。事業展開するのは、本部を置く大阪府のほか、奈良県、京都府。いずれの商勢圏でも有力な食品スーパー(SM)が数多く、どの企業も価格訴求を強めています。近年は、同業態のSMのほか、食品の扱いが大きいドラッグストア、またディスカウントストアなど異業態も存在感を増しています。

──そのなか、どういった方針で経営にあたっていますか。

粕本 就任時、社内に向け、発信したのは「売場づくり」「顧客づくり」「職場づくり」という3つのテーマです。

購買頻度の高い商品は価格訴求する一方、快適で、楽しい売場づくりに取り組んでいる

 「売場づくり」では、お客さまが買いやすく、快適に、安心安全なものを買物できる売場づくりに取り組みます。そのうえで、エンターテインメント性、楽しさも提供していきたい。「顧客づくり」は、おもてなしの気持ちと接客スキルの向上により、地道に顧客を増やそうというもの。従来の、比較的年齢層の高いお客さまに加え、20~40歳代の若い層にも来店いただけるよう努めます。最後は「職場づくり」。従業員にとり、職場は1日の大半を過ごす場所であるため、コミュニケーションを重視した、風通しのよい環境を整えていきます。

CVSをSM内に導入する

──近商ストアはどのようなフォーマットで店舗展開していますか。

粕本 「近商ストア」と「ハーベス」という2種類のSMがあります。前者はレギュラーSMで、後者はこだわり商品を積極的に取り入れた高質SM。商圏や競合状況を勘案しながら使い分けています。現在、37店があり、そのうち12店が「ハーベス」です。

 大半の店舗は、近鉄沿線の駅前、駅ナカといった立地であるのが強み。そのため地域の方のほか、会社勤めの人、学生など幅広い方に利用いただいています。

──出店はどのような方針ですか。

粕本 14年以来、新たに出店していません。前社長(現近鉄リテールホールディングスの中井潔会長)が、当面の出店を凍結、既存店の改装を進め、競争力を強化してきた経緯があります。改装はほぼ一巡、来年度以降、久しぶりに新規出店しようと、準備を進めています。複数の候補が挙がっていますが、売場面積1000㎡未満の店を出店する計画です。

──新規出店を視野に、新たな店づくりにチャレンジしていますね。

粕本 今年3月30日、既存店の「近商ストア西大寺店」(奈良県、売場面積775㎡)内に、初めての試みとしてコンビニエンスストア(CVS)のファミリーマートの売場(103㎡)を新設しました。ファミリーマートのPB(プライベートブランド)を約1000品目揃えるほか、コピー機、ATM、各種チケットを販売する「Famiポート」も備えています。各種支払いができる収納代行にも対応、SMに新たな機能を付加しました。

 お客さまからは好評で、売上は順調。計画段階では、CVSで売れた分、当社SMの売上が減るのではと予想していました。しかし実際はそのようなことはなく、CVS分がプラスになったのはうれしい誤算でした。

──今後、同様の店づくりをする計画はありますか。

粕本 来年以降、500~600㎡の小型店も出す考えで、そこでもCVSの導入を検討します。小型店だけでなく、大型店でも同様の取り組みを行うなど、利便性を高める店づくりを広げたい。

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聞き手

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

構成

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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