売れ筋商品のはずが実は死に筋?現場が知るべき在庫管理の正しいやり方
死に筋の判定は現場で行い、慎重にカットする
このような手続きで死に筋の候補を探すことができるが、判定は現場で行うことであって、本部にいるままいくら数字をにらんでいても進まない。なぜならば、実際に店舗に行ってみると、データでは死に筋と思われた商品が、①店舗後方に置きっぱなしになっていたり、②分類が適切でなかったり、③障害物があるために客に発見してもらえなかったり、という別の原因で売れなかったということがあるからだ。
店舗現場でこのように別の原因で売れていなかった問題をまず解決し、それでも売れない商品について、単品の問題なのか数量の問題なのかを調査と実験によって見極めなければならない。
この際注意しなければならないなのは、1店だけのデータで決定してはならないということだ。なるべくエリア内全店の商品回転率を見るべきである。
さて、このような手続きで死に筋を判明しても、それをそのまま機械的にカットしてはならない。品目とは客にとっての最小分類である。店にとっての最小分類は単品(SKU)であるが、SKUが異なっても客は同一として使用するものは多い。SKU単位の販売データをそのまま活用するのではなく、客はどのSKU同士を同一TPOS(注)で区別せずに使用しているのか分類してみなければならない。
また、関連購買も問題である。たとえば本体の道具とそれを使用するための消耗品とメンテナンス品などは相互に関連する。メンテナンス品は専ら購買頻度が低いが、これがあることで道具と消耗品が売れるのだ。
したがって大きな分類の方から順に自社のフォーマットとして備えなければならない品種と品目を決めていかなければならない。売れていないからといって、機械的に単品をカットしてしまうと、それまで売れていたものまで売れなくなってしまうこともある。
逆にある単品をカットしたことによって代替品との補完関係が判明し、集約されてかえって大量陳列となり、買いやすくなることもある。
死に筋の定義に従って、現状の品揃えを調査してみると、予想外に死に筋が多いことが分かる。企業によっては全単品数の9割に及んでいた例もある。数量の面でも、死に筋なのに売れ筋とほぼ同じ陳列量になっている例も多い。そのため、時間はかかるが地道に死に筋退治を進めると、売場に相当なスペースが生まれることになる。
(注)TPOS:用途(使いみち)の種類。どんなときに、どんな所で、どんな動機で(本当は何をしたくて)、どんなライフスタイルかの区別。