コンビニエンスストア業界はファミリーマート(東京都)とサークルKサンクスの統合したことにより、ランキング3位だったファミリーマートが2位に浮上し、2位だったローソンが3位に後退して以降、ランキングに動きがない“無風状態”だった。ただ、2020年度に入ってからは、新型コロナウイルスの感染拡大により、各社は甚大な影響を受けており、先行きが見通せない状況が続いている。上場コンビニチェーンの売上ランキングから業界情勢を見ていく。
ランキング1位は不動のセブン
日本フランチャイズチェーン協会によると2019年の全国コンビニ既存店売上高は前年比0.4%増の10兆3421億円で、ここ数年は一ケタ成長、あるいは横ばい状態が続く、比較的安定した状態にあった。
『ダイヤモンド・チェーンストア』編集部が作成した、上場コンビニのチェーン全店売上高をランキングにしたのが上の図表だ。トップは不動のセブン–イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン–イレブン)で、2020年2月期のチェーン全店売上高は対前期比2.3%増の5兆102億円。これまでと比較すると伸び率は低くなっているものの、安定成長を続けているといっていい。
2位は2016年に当時業界4位だったサークルKサンクスと経営統合し、3位から2位に浮上。以降は、業界2位のポジションを堅持しているファミリーマートだ。20年2月期のチェーン全店売上高は、同0・6%減の2兆9965億円だった。
3位のローソン(東京都)の2020年2月期のチェーン全店売上高は同3.4%減の2兆5069億円と増収を果たしている。4位以降は、ミニストップ(千葉県)、スリーエフ(神奈川県)、ポプラ(広島県)と続く。ミニストップの2020年2月期のチェーン全店売上高は3140億円。3位のローソンと比較すると、2兆円以上の開きがある。コンビニ業界は、上位3チェーンが市場の9割以上を占める「超寡占化状態」が続いている。
コロナ禍でランキングに変化はあるか?
ファミリーマートがサークルKサンクスを取り込んだ当初は、3位に転落したローソンとは圧倒的な差がつくとみられていたが、ファミリーマートとローソンのチェーン全店売上高の差は4000億円程度にとどまっている。また、20年2月末時点の国内総店舗数はファミリーマートが1万6611店、ローソンが1万4444店と、2200店程度の差しかない。
新型コロナウイルス問題が始まる以前は、ローソンが中堅あるいは下位チェーンを取り込めば“一発逆転”が起こる可能性は十分にあり、2位のファミリーマートを射程圏内におさめていたといっていい状態だった。
しかしコロナ禍により、先行きが見通せない状況となっている。新型コロナウイルスが業績にどれほどの影響を与えるか見通せないことから、ファミリーマートをのぞいた各チェーンは2021年2月期通期の業績予想を明らかにしていない。
粛々と施策に取り組む各チェーン
ただ、コンビニ各社の足元の営業状況を見ると、苦戦の様相が鮮明となっている。大手コンビニの4月度と5月度の月次売上高は、2カ月連続で大きく落ち込んだ。
1位のセブン–イレブンは4月が対前年同月比5.0%減、5月は同5.6%減だった。2位のファミリーマートは落ち込み幅がさらに大きく4月は同14.8%減、5月は同11.0%減。3位のローソンも4月が同11.5%減、5月が10.2%減と、セブン–イレブン以外は2カ月連続で2ケタの落ち込みとなった。
そうした中、大手各社とも大きく動けず、粛々とこれまでの計画を進めている。セブン–イレブンはかねて進めてきた新レイアウトへのシフト。新レイアウトを導入したり、立地別に売場レイアウトを変更したりすることで、品揃えにメリハリをつけ平均日販を引き上げ、状況打開につなげたい考えだ。新レイアウトは20年度(21年2月期)末までに1万5000店に導入する予定としている。
2位のファミリーマートは希望退職の募集などで、内部のスリム化を図っており、基盤の強化を進める戦略。3位のローソンは「無印良品」の商品を都内3店で実験導入し新規客の流入をねらうほか、食事宅配の「ウーバーイーツ」対応店を500店に広げるなどコロナ禍による宅配需要の拡大に対応しようとしている。
このように大手を中心とした各コンビニチェーンは、コロナ禍で大きく動くことができず、売場や体制を固める戦略を粛々と推進している。足元では、感染拡大の第二波がいよいよ現実味を帯びている。大手各社の苦慮は続きそうだ。