ローソン(東京都)が「無印良品」の販売を開始する。無印良品といえば、かつてファミリーマート(東京都)で取り扱っていたものの、2019年1月末をもって、店頭から静かに姿を消した。良品計画(東京都)としては舞台をローソンに移しての再挑戦だ。コンビニでの「無印販売」は成功するのだろうか。
ファミリーマートが「無印」の販売をやめた理由
ローソンが都内の3店舗で「無印良品」の実験販売を開始する。「久が原1丁目店」(大田区)、「新宿若松町店」(新宿区)、「南砂2丁目店」(江東区)で肌着や靴下、化粧水、文具のほか大ヒット商品の「レトルトカレー」など計約500品目を販売する。
ファミリーマートが「無印良品」の取り扱いをやめた際に物議をかもしたのが、コンビニという小商圏型店舗で「無印良品」が持つ世界観をどこまで出せるのかという点である。
「無印良品の商品はどこで売っても売れるでしょう」というような指摘があるかもしれないが、実はファミリーマートが取り扱いを終えたのは、契約が切れたからとされているが、販売が芳しくなかったからではないかという観測もある。当然、売れ行きがよければ契約を更新していたに違いないためだ。
販売が芳しくなかった理由の一つと言われているが、販売する「場所」だ。ファミリーマートで「無印良品」を取り扱っていた頃は、売場の一角に無印良品コーナーを設けていたが、ほかの商品に埋没していた印象は否めない。
「衣食住」の商品が揃っていて、店全体で「無印良品」という世界観を感じることができるーー。無印良品ブランドがこれだけ多くの支持を集めるに至った背景には、このような理由があると言われている。
「これでいい」の世界観
「これ“が”いい」ではなく、「これ“で”いい」――。
無印良品を展開する良品計画(東京都)、無印良品ブランドの開発コンセプトをそのように表現している。これについて同社は、「これがいい」といったような強い嗜好性を誘うような商品づくりではなく、「これでいい」という理性的な満足感を顧客に持ってもらうためと説明する。
そして無印良品の商品は、こうしたコンセプトを店舗で実際に体験して購買できるように設計されている。だが、そうした商品群を“切り売り”するような形でコンビニの店頭に置いても無印良品の世界観を表現できないというわけだ。
無印良品の店舗で買いたいという顧客の多くは、圧倒的な品揃えを見て、コンセプトがにじみ出るような商品を吟味しながら買物するのを楽しんでいる。コンビニで弁当やファストフードを求めるニーズとはまったく異なるのではないか、という声も聞こえてくる。
しかしローソンは、そんな意見は百も承知の上だろう。それでも無印良品を扱うのだから、勝算があるとみていい。アフターコロナの世界では、遠くの無印良品の店舗ではなく、より身近なコンビニで無印良品ブランドの商品を求めるお客が増えていく可能性も十分に考えられる。
また、ローソンは今後、無印良品の販売だけでなく、良品計画と共同で商品開発も進めるという。「無印」という確立されたブランドパワーを最大限に引き出した商品をつくることができれば他チェーンとの強烈な差別化要素となるはずだ。
ローソンの無印販売で、セブンはどう動く?
そうなってくると気になるのが、コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)の動きだ。注目は「セブン-イレブン」の店舗で「ロフト」の商品を本格的に扱い始めるかどうかである。
セブン-イレブンはかつて、神奈川県の一部店舗において、ロフト(東京都)で扱う商品を並べたコーナーを設置する実験を密かに行っていた。筆記用具などの文具、化粧小物、ラッピング用の包装紙などを販売していたとのことだが、現在はこの実験は行われていないようだ。実験を重ねた結果、コンビニ店舗では「ロフト」商品のニーズがないとの判断に至ったのではないかと見られる。
しかし、ローソンの無印良品販売が成功すれば、セブン-イレブンがロフト商品の扱いを再検討する可能性も出てくるだろう。無印とロフト。2大コンビニチェーンの生活雑貨専門店ブランドによる集客対決は実現するか。ローソンでの無印良品の販売動向に注目だ。