ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営1〜ショッピングセンター数の減少が意味すること〜
減少に転じた理由
では、なぜ減少に転じたのか。無数の要因が複合的に絡み合っているがそれらを整理するとおおよそ次の通りである。
- 人口の減少
- 少子高齢化
- 温暖化による消費の変化
- ECの伸長
- 競合の激化と同質化
- サブスクなど新サービスの登場
- スマホなど情報通信費の上昇
- 非正規雇用の増加と収入の減少
- 通勤着のカジュアル化による被服履物消費の減少
- 地価と工事費の高騰
- 商業用不動産の利回りの低下
- 働き手の減少
- 消費者の意識変化
これらを1つずつ解説していてはキリがないので割愛するが、少なくともこの10年、「ショッピングセンター事業にとって追い風になることは何1つなかった」と言っても過言ではない。
コロナ禍の影響
2020年が明けた時、世界が疫病に襲われるなど誰が想定していただろう。誰もが「今年はオリ・パラ(オリンピック・パラリンピック)で盛り上がる」と思い、企業もそれに間に合わせるべく、ビル建設や鉄道建設やイベントの準備を急ピッチで進め、この夏を心待ちにしていたし、ショッピングセンターも多くのプロジェクトが進行していた。ところが例の無い「緊急事態宣言」が発出され、街もオフィスも商業施設も休業に追い込まれ、工事もストップし、世界的にも死者は溢れ、企業倒産も相次ぐ。
ようやく日本では宣言が解除され、平常に戻りつつあるものの以前と同じ生活に戻るには時間がかかることが想定され、合わせて新たな生活スタイルを模索することも求められている。
アフターコロナは、ウィズコロナ
ショッピングセンターはどこへ向かう?
コロナ禍の収束に向かう中、世間では「アフターコロナ」という声も聞こえる。しかし、天然痘のように撲滅されることは想定されず、未だワクチンも治療薬も無い状態でアフターコロナなどあるはずもない。ワクチンも特効薬も開発されている季節性インフルエンザでさえ毎年3,000人の死者を出している。それを考えるとアフターコロナではなくウィズコロナとして我々は生活していかなくてはならないのだ。これまでもインフルエンザの他、O157、麻疹、アニサキスなど細菌やウイルスや寄生虫などが常に我々の周りに潜み、手洗い、うがい、加熱、休養などの対策を取りながら回避しながら共存しているのである。
今後もショッピングセンターや商業施設も同様にこれからと同居することが求められる。ただ、これまでの対策に加え、密接密集密閉を避け、ソーシャルディスタンスを取り、消毒を徹底し、「接触感染、飛沫感染、空気感染、媒介物感染」、この4つを当然のこととして、経営に取り込むことが求められるのである。
では、多くの減少理由とコロナ禍を受けて今後、ショッピングセンター事業はどこへ進んでいくのか、進むべきなのかをこの連載を通して明らかにしていきたい。
次回は、ショッピングセンターのビジネスモデルとは、一体どういったものだったのか、そしてどこに強みを持ち、その強みはなぜ今揺らいでいるのか、それらを明らかにしていくこととする。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。
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