地元特産品の”泉州野菜”で経営危機から脱出! 「いずみピクルス」のブランド戦略
ロスが出やすい水なすを使い切る SDGsの観点からも注目
泉州野菜の水なすは、高級百貨店では1玉500円前後で売られる高級食材。生食もできる。しかし「いずみピクルス」が登場する前の食べ方はぬか漬け一辺倒で、賞味期限が短いこともネックだった。また、塩分が多いことを気にして避ける人もいた。「そういった人にもおいしさを届けられるように発想したのがピクルスだった」と西出氏。ベースとなる味は、母、姉、叔母を巻き込んで完成させた。そして2018年には、昆布だしを利かせた水なすのピクルスが農林水産省食料産業局長賞を受賞した。
皮が薄くて柔らかい水なすは、葉が触れるだけでも傷ができてしまうほど繊細な野菜で、1玉を漬け込むぬか漬けには使えない規格外品も多い。しかしピクルスならカットして使用するため、ぬか漬けには使えない水なすを使えるメリットがある。「いずみピクルス」のピクルスは規格外野菜を廃棄処分せずに使い切れることから、SDGsの観点からも注目されている。
合成着色料・保存料は無添加で、開発当初の賞味期限は冷蔵で40日だったが、長期保存が可能になるよう試行錯誤。常温で1年持つようにした。煮沸消毒では野菜の細胞壁が壊れて味と食感が損なわれてしまう。しかし、80度を超えない熱で加熱することで、殺菌ができるとともに調味液の味が食材により深くしみ込む。西出氏は「見た目も食感もよい、おいしいピクルスを作れる。よそに負けない、自分たちなりのノウハウを確立できている」と話す。
水なすピクルスは和風・洋風・ゆずの3種類。泉州野菜のピクルスとして玉ねぎも商品化した。長いも、大根、きゅうり、パプリカ、セロリ、マッシュルームなどのほか、フルーツのピクルスも手がける。さらにドレッシング、ジャム、クラフトコーラなどのベースとなるシロップ「アロマコーディアル」と新商品も次々と開発し、今では80種類以上の商品をそろえる。

水なすと玉ねぎは地元農家からの仕入れをメーンに、自社農園「いずみファーム」でも栽培する。本社となりには直営の「泉州コミュニティーマーケット」と「SON CAFE (サンカフェ)」の複合ストアをオープン。「いずみピクルス」ブランドの商品や産直野菜を販売するとともに、ピクルスと相性のよいフードメニューやアレンジレシピを提供。ピクルス製造の過程で生じた野菜の端材も、細かくカットしたり出汁に使ったりなど、できる限り食品ロスを出さないようにしているという。
「自分たちで農業と飲食業を始めたのは、川上から川下まで一貫して手がけ、廃棄物も資源として有効活用する垂直統合型のゼロエミッションに挑戦してみたかったから。ピクルス販売だけではないサービスを提供できるブランドになりたいし、やりたいことはいろいろある」(西出氏)





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