社内ベンチャーから事業化! ウエルシア薬局が挑む介護タクシー「ウエルタク」

兵藤 雄之

ウエルタク、競合サービスとの差別化ポイント

 現在、このエリアで同様サービスを展開する事業者は15社程度あるが、ウエルタクには他社との差別化ポイントがいくつかある。

 ひとつは運賃体系。多くが一般のタクシー同様、時間距離併用制を採用しているが、ウエルタクの場合は、時間制一本で利用者にもわかりやすい。

 ケアドライバーが医療や介護(介護職員初任者研修など)の専門資格保有者というのも大きい。現在、1号店では、訪問看護の経験が豊富な看護師資格者が1人、消防で30年以上、救急救命士として活躍した後、看護師として病院勤務をしていたという人が1人、薬剤師でもある井田社長の3人体制で運営している。

坂戸鶴ヶ島営業所のスタッフ。左から、浅野さん、井田社長、小山さん
坂戸鶴ヶ島営業所のスタッフ。左から、浅野さん、井田社長、小山さん

 そしてもうひとつ、営業所の視認性もある。ドライバーの待機事務所が介護事業所の裏側にあったり、個人事業として自宅を拠点に行っているケースもあり、専用車両の稼働中以外、介護タクシーの存在が目に触れる機会が少ないところが一般的。しかし、ウエルタクの場合、営業所がウエルシア薬局の敷地内にあるため、多くの人が認知しやすい。

 ウエルタクが稼働して1カ月余り。利用者からの感謝の言葉に励まされることもある。「薬局窓口での『ありがとう』以上のものをいただいている気がする。それだけ困っていたのだと、あらためて実感した」という。

ストレッチャーでの移動が必要な患者の場合、2人体制で対応する
ストレッチャーでの移動が必要な患者の場合、2人体制で対応する

 もちろん、事業として本格展開していくうえでの課題は少なくない。

「まだまだ、店舗近くに住まわれている個人の利用が中心。今後の事業として考えたときには、施設や病院を通じて患者さまやそのご家族に案内してもらえるよう、関係性を築く必要がある」と考えている。

 ウエルタクでは、次のステップとして、営業所を点から面へ、グループ内で展開している、薬局・ドラッグストア事業、介護事業とのシナジー創出へ。そして、「利用しづらい」というイメージのある介護タクシーの世界に、「気軽に安心して使える」新たなスタンダードの確立をめざしている。

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