社内ベンチャーから事業化! ウエルシア薬局が挑む介護タクシー「ウエルタク」
ウエルシア薬局(東京都)は2025年3月10日より、子会社ウエルシアケアトランスポート(東京都)を通じ、介護タクシー事業「ウエルタク」をスタートさせた。23年より開始した社内ベンチャー制度「ウエルシア・ベンチャー・チャレンジ・プログラム」から生まれた事業の第1号案件だ。
ウエルシアが挑む「介護タクシー」とは
介護タクシーは「要介護や身体に障がいがある人が、安全かつ快適に移動できるようサポートするサービス」の俗称。介護保険制度を利用し、事前のケアプランへの組込みや、利用にあたっての制約があるものを「介護保険タクシー」、利用に制約がない介護保険適用外のものを「ケアタクシー」「福祉タクシー」と呼ぶことがある。
ウエルシアグループの「ウエルタク」は介護保険適用外のサービスだ。
主として一人で公共交通機関を利用できない人を対象として、通院、買物、食事、観劇、冠婚葬祭など、利用目的にとくに制限はない。要介護認定や要支援認定を受けている、身体障害者手帳の交付を受けている、といった場合はもちろん、ケガや病気などで一時的に歩行が難しいというケースでの利用も可能だ。健康な人が同乗者として利用できるというのも、介護保険適用外のサービスならではだ。
事前予約制で、病院での受診のための送迎時の付き添いや、薬局での処方薬の受け取りといった代行サービスにも対応する。使用車両は、車いすやストレッチャーが載せられるリフト付きの特殊車両で、ケアドライバーは2種免許のほか、医療や介護に関する有資格者だ。
料金体系は時間制運賃(国がエリアにより決めている)と、介助料や資機材(ストレッチャーや酸素吸入器など)の利用料との合計。介護保険タクシーと比べ2倍くらいの運賃になってしまうが、「事業としての継続性が重要だと考えた」とウエルシアケアトランスポートの井田社長は話す。

社内ベンチャー制度から事業化!
このウエルタクは、ウエルシアグループの社内ベンチャー制度「ウエルシア・ベンチャー・チャレンジ・プログラム」から生まれたもの。応募者数69人から、書類選考、プレゼンテーションによる最終選考を経て、ウエルシアホールディングス(東京都)、ウエルシア薬局の経営会議により事業化が決定。事業開始にあたり、24年10月、ウエルシア薬局100%の出資によりウエルシアケアトランスポートが設立され、営業に必要となる「一般乗用旅客自動車運送事業」(福祉限定)の認可を取得した。
井田社長は介護タクシーの事業化を提案した思いをこう話す。
「前任の在宅推進部時代、介護施設を訪問する機会も多く、たびたび搬送の現場を目にしてきたが、『なかなか予約が取れない』『運賃もバラバラ』『安心して気軽に頼めない』といった声を聞いていた。『地域№1の健康ステーションの実現』をめざすウエルシアグループとして、この地域の課題を解決できれば、お客さまの役に立つ、と考えた」。井田社長自身、両親の介護で、介護タクシーを利用してきた経験からも、その必要性を強く感じていたという。
25年3月、ウエルタク1号店(坂戸鶴ヶ島営業所)が「ウエルシア薬局坂戸若葉駅東口店」(埼玉県)の敷地内に設けられ、坂戸市、鶴ヶ島市などをサービスエリアとして営業をスタートした。


この地からのスタートになったのは、坂戸市はウエルシアグループとの間で、早くから地域包括協定を結んでおり、行政とのつながりも深く、また井田社長が30年以上、この地域で生活しているという土地勘の働くところだったことも大きい。