脱“割高感”!「独自商品なし」の食品宅配スタートアップ、驚きの戦略とは?
コロナ禍以降、急成長から定着フェーズへシフトしつつある食品宅配サービス市場に、スタートアップが独自戦略を携え、新規参入を果たした。モビリティ分野の新規事業などに携わり、社会課題の解消をテーマにキャリアを重ねてきた八田麻紗子社長のミールセレクト(千葉県)だ。オリジナル商品を持たず、激戦区へ乗り込んだ同社の戦略について、八田氏に聞いた。
共働き世帯7割超え時代の「家事」という課題
「おいしく栄養バランスの良いエキナカ総菜を送料無料で自宅に届けられないか?」
起業のきっかけは、バリバリと仕事をこなすキャリア女性として躍動する一方で、家事の時間を取りづらい毎日を過ごし、八田氏自身が感じた素朴な思いだった。
内閣府の最新調査によると、共働き世帯の割合は2001年から2021年までで約1.5倍増加。夫婦のいる世帯全体の約7割にまで達している。
仕事と家事の両立が難しい現実に直面する世帯が増える中で、家事時間を圧縮できれば、より豊かな生活が実現できる―― 社会課題の解決をテーマにこれまで、いくつかのプロジェクトに携わってきた実績もある八田氏が課題に据えたのは”家事の置き換え”だ。
こうした観点に着目し、拡大してきた食品宅配サービスはすでに多くある。だが、それぞれに一長一短があり、「家事の置き換え」と言えるまでに定着しているサービスは見当たらない。八田氏が着目したのは、それらが内包する原因だ。
例えばコロナ禍で一躍、注目を集め、利用者を拡大させたウーバーイーツなどのフードデリバリーサービス。ラインナップが充実しており、食べたいものがすぐに食べられる優位性があるものの、配達費用が上乗せされ、3割前後割高になるデメリットがある。
お気に入りの食品店で販売している総菜の冷蔵や冷凍商品の宅配サービスもあるが、単一メニューという限界がある。ネットスーパーという選択肢もあるが、どちらもやはり、配送コストが上乗せされ、コスト負担がのしかかる。
栄養バランスを考慮し、冷凍で簡単な調理で食せ、安定的に宅配されるサービスは、健康志向派の支持を集めているが、メニュー数が限られ、機能性重視の傾向で万人向けとは言い難い。