手作りにこだわる老舗ベーカリーチェーンが”冷凍パン”で狙う業界革新とは
冷凍パンが業界を救う理由
消費者サイドに立てば、工房のある店舗の臨場感こそないものの、欲しいパンが確実に購入できる安心感は、同社のファンならより大きな魅力になるだろう。将来的には、例えばコンビニなどでも、より身近に同社のパンとの出会える機会が増える可能性も十分考えられる。
一方、店舗側にとっては、このシステムは業界に革新をもたらすポテンシャルがある。同社販売促進部部長の中山興久氏が力を込める。
「我々はこのフローズンブレッドとマイウェイオーブンが、パン業界に革新をもたらすものと考えている。なにより、高品質の焼きたてパンを誰でも提供できるから。これによって、業界の人手不足の問題に切り込めるし、焼き立てにこだわるほど予測が難しい需給バランスの問題をクリアし、フードロスにも対応できる。できるなら、同業他社に積極的に導入して欲しいとも思っている」
自社の飛躍よりも業界の未来を見据えるのは危機感からだ。パン業界はなり手が減少傾向、高齢化で職人はリタイアフェーズにあり、人材不足が深刻だ。加えて、環境変化や円安、ウクライナ情勢の緊迫などで原材料費の上昇が著しい。同業他社も苦しい状況にあえいでいる。
冷凍技術を駆使した高品質なフローズンブレッドの提供システムは、こうした問題をクリアにする可能性があり、だからこそ、中山氏は革新的と力を込める。
同社にとっては新たな事業領域となるBtoBでのフローズンブレッドとマイウェイオーブンのパッケージ提供。いまのところ、費用面のこともあり様子見の企業が多いが、反応は良好という。これまでにないチャレンジだけに、導入に慎重になるのも無理はない。