ゴンチャ、タピオカブーム終焉でも、店数を増やし続けられる納得の理由
客と従業員の「推奨度」を上げる
現在、毎年約20店舗の出店を続けるゴンチャ。だがそうはいってもブーム終焉と新型コロナの影響は小さくなかった。2019~2021年にかけての売上高は、2018年に比べて半分以下に落ち込む場面もあった。その窮地を救う救世主として、2021年に社長に就任したのが角田氏だ。前職でサブウェイを立て直した経験を買われた形だった。
再生に向け角田氏が進めたのは、2つの「推奨度アップ」に向けた調査だ。1つめの調査相手は客。「ゴンチャを友達や家族に勧めるか」を丁寧に聞いた。次の調査相手は従業員。「ゴンチャを働く場所として勧めるか」を尋ねていったという。
これらの結果から「勧めない理由」に焦点を当て、改善の効果が大きいと見込んだ課題から集中して解決していった。狙いは、客と従業員が店舗で過ごす時間、働く時間の「体験価値」を上げていくことにあった。「再生への近道はない。1つ1つの問題の火を地道に消すことで、満足度を上げていくしかない」と角田氏は言う。彼のサブウェイ時代の異名は「消防士」だ。
この際に行われた改善で、最も注力したのは待ち時間だ。注文から受取までの時間を短縮するため、モバイルオーダーの仕組みやセルフオーダー端末も導入した。次は「NO」を言わない接客。なぜなら、客から何らかの依頼があったときに「NO」を言うのは、客と従業員、両方にとってストレスとなるからだ。
それまでは、例えばカスタマイズの依頼があった際、規定によって「できない」と断っていたこともあった。だが角田氏は、決まったレシピがあるとしても、「量を減らす」「ミルクフォームを抜く」など、できることなら要望に応える方針を打ち出した。さらに、販売終了していたが惜しむ声のあった複数の商品を復活した。反対に、コーヒーメニューは廃盤に。「もし蕎麦屋にラーメンがあったら、『この店大丈夫?』とお客さまは不安になってしまうだろう。ブランドの強みをしっかりと打ち出すためになくした」(角田氏)
従業員に向けた改革では、好む音楽を選んで導入したり、髪色も自由にした。また、「推奨度」が低い店では、「アルバイトの時給設定が周囲の店と比較して低くないか」「意味不明なルールや、無駄な仕事がないか」「定期的にミーティングが行われ、目標が分かりやすく共有されているか」などを確認して、真摯に改善していったという。
こうした改善を受けて、店舗従業員の「推奨度」がいち早くアップ。次に客、オフィス部門の従業員と続いた。オフィス部門従業員の「推奨度」は、業績の改善が目に見え、前進している感覚が得られるに連れて上がったそうだ。「ゴンチャの今の最大の目的は、それらの推奨度が上がることで高まる体験価値を守り、ファンになってもらうことにある」と角田氏は強調する。