米国などでは、「デッドモール」と呼ばれる空室だらけのモールがある。それを引き合いに「これから日本もデッドモールが増加する」と心無い記事を書くライターや評論家がいる。しかし、われわれの周囲にそのようなデッドモールは存在しているだろうか。空室の目立つショッピングセンターは少なからずあるが、それも少数である。では、なぜ、日本にデッドモールが現われないのか、今回はその理由を解説する。
ビジネスモデルの違い
「デッドモールは日本には現われない」と言えるのは、日本特有のビジネスモデルに起因する。日本のSCは、開発して売却されることは非常に少なく、デベロッパー自らが保有し、運営に永続的に関与するケースが多い。
その場合、直接的に関与することもあればSC運営を行う子会社を通じて行うケースもある。いずれにせよ「つくって売っておしまい」というビジネスではなく、運営管理を通じたインカムゲインを考える経営が「JAPAN-SCスタンダード(日本流のショッピングセンター基準)」である。
要するに、産み育てる息の長いビジネスとして考えて、商業施設を街づくりの一環として開発を進める。そこからエリアへの集客や街のブランディングに価値を見いだす。三菱地所の大丸有や三井不動産の日本橋や東急の渋谷が好例だろう。
デッドモール化する要因
以下の図表1は、日本SCとデッドモール化する海外SCの比較をしたものだ。わかりやすくするために多少デフォルメした面もあるが、前項で指摘したSCビジネスへの関与度がすべてにわたって影響していることがわかる。
JAPAN-SCモデルは、「造った後、その成長を願う」ことが最大の特徴である。
それに対して、デッドモール化するSCはつくったのちに賃料収受を狙う不動産賃貸物件となる。加えて、賃料収入を裏付けとした利回りと資産価値が算定され売却される。SCを買収後、SCの営業成績が下がり配当が低下すれば、資金は他の収益物件へ移ることになる。不動産ビジネスとしては、こちらの方が真っ当な気もするが、日本のSCはそうドライではない。
デッドモールは「新規に開発された後に、売却され、運営管理にそれほどの経営資源をかけられず、資産価値の低下を招く」というシナリオを描く。それを安値で買い受けた新たなデベロッパーは、時代に合致したリニューアルを行うことによってバリュー(資産価値)を上げて、転売する。この繰り返しである。
要するに、
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