本連載29回で解説した「パーク・リテール」。この「パーク」という言葉が固有のイメージを想起させたのか、狭義に捉えられていることから今号では、本来のパーク・リテールの意味について解説したい。
リテール(買い場)の変化
市場(いちば)は元来、物資を調達するために行われた物々交換、それが集まり市(いち)が形成されたことに由来する。時代を経て、集落(都市)の形成され、場所が固定化されたことで、店舗が誕生した。呉服屋、両替商、飯屋など時代劇で見る風景である。
日本では、城を中心に発達した城下町が経済の中心となり、長らく繁栄してきた。そこに商店街(ストリート・リテール)ができ、アーケードが設えられ、市民の買い物や時間消費は中心市街地(タウン・リテール)へと向かった。ここに、昭和の街の風景が誕生する。当時は、街にファッションビルや百貨店があり、休日ともなれば人々は街へ繰り出して行った。
その後、鉄道事業者が、駅ビルやエキナカをつくり、交通の結節点に買い物場所を建設した。さらには、空港や高速道路などの交通インフラの整備と合わせ商業施設をつくりはじめる。これがトランジット・リテールである。
国民の生活水準も向上し、国策として進めた郊外のニュータウン開発と持ち家政策が奏功した。モータリゼーションの発達もあり、都市の郊外化と居住エリアの拡大が起こる。それに呼応する形で、外国から輸入したモール文化が花咲いた。全国に多くのモールが建設され、週末は車で出かけるモール・リテールが全盛を迎える。
ところが2000年代に入り、ニュータウンの高齢化が進み、人口減少社会に突入した。市場の変化と共にスマホの登場と4Gの普及によりECが進展、今のネット・リテール時代を迎える。そのアンチECとして台頭するのがパーク・リテールである。
ECの本質的価値
ただ、ネット・リテールを代表するECは強い。いつでもどこでも、品揃えもリアル店舗では実現できない品数を扱い、履歴を追うことでレコメンドを提案する。この精度はアルゴリズムの進化によりさらに向上するだろう。
一方、ECを事業者視点で見た価値は「買い場」を手のひらにしてしまったことにある。それは家や職場や学校やカフェ、どこでも買い場(売場)にすることであり、「物理的な店舗の建設・商品を納品・販売員の配置・棚卸や在庫管理」など、多額なコストを削減してしまった。
ECは事業者と消費者の両方にとって利便性の高いものであるからこそ、急
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