第89回 意外と知らない、独特すぎる日本のSCの仕組みと運営管理とは
近年、やや陰りが見えてきたショッピングセンター(SC)事業だが全国には3129カ所(図表1)のSCが立地し、毎年一定数の新たなSCが開業、ここに営業管理、販促活動、売上金管理など運営業務に携わる人数は相当なものになる。しかし、日頃行っている業務が実は世界標準ではなく、日本独特の業務であることも多い。加えて、SCの形態も日本独自のものも多く、今号では、この日本独自の進化を遂げたSC事業の良い点とそうでない点について解説する。
SCの類型と日本独特な形態
![t_kimura/istock](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2024/03/iStock-1340128756.jpg)
SCにはいくつかの分類方法があるが、最もポピュラーなのは、施設規模や商圏範囲の広さによって分類する「ネイバーフット型SC」「コミュニティ型SC」「リージョナル型SC」「スーパーリージョナル型SC」である。
これは車社会のアメリカのSCを分類するには適しているが、日本国民の生活様式では立地や形態や顧客ニーズで呼称する「駅ビル」「ファッションビル」「駅ナカ」「地下街」の方が親和性は高い。しかし、これらは日本独特の文化に根ざしたものであり、諸外国であまり見ることは無い。駅ナカはその最たる例だ。欧米では見ることはなく、香港などでは地下鉄の改札周辺にコンビニがあったりする程度、唯一台北の駅周辺にはあるが、世界的に見てその程度である。
日本は、鉄道を主たる移動手段として生活する国民であるため、駅ビルや駅ナカが発達した。消費活動を通勤通学の途中で行うことはごく日常であり、その生活習慣を基礎に駅ビルや駅ナカが発展した。また、鉄道整備前はお城を中心に街が形成され、その集積が中心地市街地として発達、その中にファッションビルや百貨店が立地し消費が街で行われた時代を経ている。
しかし、前述の通り、鉄道での生活が定着するに従い、駅ビルが隆盛を極め、今や「駅ビル一強」と感じるほどの強さを見る。しかし、実はこの「駅ビル」も世界標準ではなく、日本独特の文化であり、SCの進化形である。
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