本多利範氏が語る、ディスカウントストア開発の成否を分ける2つの要素
各種商品の値上げが続くなか、ディスカウントストアの注目度が高まっている。そのなか、新フォーマットとしてディスカウントストア開発に挑戦する小売企業も相次ぐ。本多コンサルティング(東京都)の本多利範氏は「もともと社会的ニーズの高い業態だが、日本市場に合った特徴を工夫すれば、大きな流通の勢力になる可能性がある」と持論を展開する。
本稿は連載「教えて本多利範さん!」の第2回です。
依然として影響力持つ問屋
さまざまな商品の値上げが続いている。一方、コロナ禍の影響、また景気の不透明感のなか、収入減に苦しむ家庭は多い。ここ数年、生活保護世帯数がじわり拡大していることでもわかる。
生活に困っている人が増えているわけだが、厳しい状況を背景に注目されているのがディスカウントストア業態だ。生活必需品をはじめ、日々、安い値段で買物ができる店は、多くの生活者にとっても頼もしい存在であるのは間違いない。
イオン(千葉県)グループやヤオコー(埼玉県)をはじめ、“次世代の乗り物”としてディスカウントストア開発に取り組む有力小売企業が増えている。とはいえ動きはまだ始まったところで、各社とも手探りの状態にあるのが現状だ。
新しい業態としてディスカウントストアに挑戦するにあたっては、念頭に置かねばならないポイントがある。
ひとつは「安い商品を求めるのは、お金がない人」と決めつけるのは間違いということだ。比較的高所得者であってもディスカウントストアを利用する。自分が本当に欲しい商品には金に糸目をつけず買物をする反面、こだわりのないモノについてはできるだけ安い店で済ますと考える人も少なくない。つまり買い方が多様化しているのだ。
次に、日本では独自の流通が発達してきた点にも注意すべきである。具体的には、「問屋制度」という複雑な仕組みのなかに、食品ビジネスが置かれているのだ。
一般に食品のディスカウントストアは、中間流通を通さずに成立してきた業態と言える。しかし現在の卸売企業は、デリカ商品の開発力もあり、今も大きな影響を持ち続けている。日本の食品流通はグルーバルな視点からすれば異質である。
こうした複雑な取引制度のなかで、小売企業は独自のフォーマットをいかに組み立てるか。価格だけでなく、地域性といった要素も視野に入れる必要がある。
さまざまな側面を考慮すると、新たな業態としてディスカウントストアを確立することは決して簡単ではない。しかし社会的には顧客ニーズの高い業態であるのは確かだ。知恵を出せば、大きな流通の勢力になりえる可能性を持っているのは間違いない。