リーボック販売権取得でブランド事業加速のロコンド マッキンゼー出身社長の次の一手は?
「GMV倍増計画」実現に向け越境ECも強化
もともとはドイツのVC(ベンチャーキャピタル)の100%出資によって2010年に設立されたジェイドグループ。米ザッポスのビジネスモデルに着想を得て、国内初の靴専門ECモール「ロコンド」を立ち上げた。
実は、田中氏自身は創業者ではなく、戦略コンサルティングファームのマッキンゼーに在籍しながら経営のサポートのような形でジェイドグループに関わっていた。しかし、ほどなくして同社が経営危機に陥り、親会社のVCから「あなたが経営を担うなら5億円追加出資する」と持ちかけられ、2012年に代表取締役兼共同創業者に就任した。
人員整理や全品買い取っていたアイテムの返品交渉などの“嫌われ役”を一手に担い、初年度には12億円もの赤字を計上。地道に経営を立て直しながら、肝心のECモールでは足幅も含めた詳細にわたるサイズ表記、当時は画期的だった返品サービス、靴以外のアイテムの拡充など機能やサービスを充実させていき、国内有数のファッションECモールとしての地位を確立した。
加えて、2012年に立ち上げたプラットフォーム事業も順調に成長。BtoCのファッションECモール事業とBtoBのプラットフォーム事業のシナジーが徐々に発揮され、2015年に黒字化、そして17年には東証グロースへの上場と、瀕死に近かった同社を見事に立て直した。
その田中氏が、目下の課題に置いているのが日本国内の倉庫から直接海外に配送する越境ECへの対応だ。来年3月には越境EC支援を行う企業の買収も予定しており、支援体制の強化を図っている。「特に台湾や中国などアジア圏では日本のブランドの人気は高く、市場のポテンシャルは大きい。プラットフォーム事業の物流サービスも越境ECに対応できるような形に変え、ウェブサイトも海外のお客さまが求めやすいUIの構築など、順次手を打っていく」
中期経営計画では236億円(2023年2月期決算)のGMV(マーケットプレイスの流通取引総額)を400億円に引き上げる「GMV倍増計画」を打ち出し、長期ビジョンでは2030年までに1000億円のGMVを目標に掲げる。
「現状の成長スピードでは簡単に到達できない目標。M&Aも積極的に行っていきたい」
マッキンゼー在籍時にアメリカに留学し、ザッポスCEO(当時)のトニー・シェイ氏の講演を聴き「Delivering happiness(幸せを運ぶ)」との言葉に感銘を受けたという田中氏。その言葉を胸に、「ZOZOTOWN一強」の様相が強まるECモール市場でこれからも挑戦を続けていく。