「イオンシネマ」がコロナ前の水準まで売上を回復させた意外な戦略とは
リアルで味わうコンテンツの価値を高める
映画作品は近年、邦画が洋画を上回る人気で、最近の傾向としてはアニメ作品のシェアが拡大しているという。久保野氏は「かつてアニメ作品は『オタク』『サブカルチャー』といった印象が強かったが、近年のヒット作品の増加やインターネット配信サービスでの配信作品の増加によって、もはやメインカルチャーとして認識されている」と久保野氏は見ている。
イオンエンターテイメントが今後重視するのは、リアルな場における体験と価値の提供である。競合となるインターネット配信のサブスクリプション型サービスと差別化を図る必要がある中、映画館というリアルでの体験機会を増やしていく考えだ。イオンシネマは以前から高解像度のレーザープロジェクター「IMAX」や、客席にアトラクション機能を搭載する「4DX」などのハード面の強化に取り組んでおり、今後も顧客体験の向上をめざす。
加えて、映画作品にとどまらない新たなコンテンツの提供にも挑む。たとえば23年4月には舞台作品を全国の映画館で生中継し、10日間・15公演で計10万人を動員した。このほかライブビューイング、コンサート、スポーツ中継などを提供するコンテンツの開発に注力する。
コロナ禍が収束に向かう今、花火大会や音楽イベントなどリアルのイベントが賑わいを見せている。久保野氏は「映画というコンテンツを中心に、リアルな場の価値を最大化できる取り組みを進めていく」と話す。