「落とし物」返還率が3倍に!気鋭ベンチャー開発の意外なソリューションと狙う巨大市場とは
年間40億円の「未開拓のフロンティア」に挑む
findの落とし物プラットフォームの可能性は、それにとどまらない。「いずれは物流の分野にも入っていきたい」と和田氏は語る。
落とし物でもう一つ厄介なのが、見つかった落とし物の受け取り。保管センターは時として遠方にあり、時間をかけて取りに行かなければならない(筆者もJR「湘南新宿ライン」の浦和駅で忘れ物に気づき、最終的に見つかったのはよいが、神奈川の平塚駅まで取りに行った経験がある)。
和田氏たちが描いているのは、集約された落とし物を、落とし主のもとへと届けるサービスまで踏み込むこと。「理想としては、LINEで問い合わせたらすぐに落とし物が見つかり、Amazonのように翌日には届けられるようにしたい」(和田氏)。
物流の機能を実装することで、さらに新たな付加価値の可能性が拓けてくる。それは、最終的に落とし主が現れなかった落とし物を売買する二次流通のプラットフォームだ。
鉄道会社から警察署に預けられた落とし物は、3カ月間の保管期間が過ぎると、一時拾得者である鉄道会社に再び戻ってくる。この“持ち主知らず”の落とし物の処分も鉄道会社にとっては悩みの種で、現状はリサイクル業者に丸投げしている会社が多いという。
「私たちが落とし物の管理を一括で受託できるようになれば、ECで販売したり、オークションにかけることができ、その収益を各鉄道会社に還元することができる」
こう和田氏は語り、「そのためにも、まずはfindを各鉄道会社や商業施設に普及させ、面を広げていきたい」と意気込む。
警視庁が2022年中に受理した拾得物の件数は約343万件、金額にして実に約40億円にも上る。「落とし物問題」には、多くの人が“見落として”いた未開拓のフロンティアが広がっているのだ。新進気鋭のスタートアップが今、そのフロンティアに挑んでいる。