広島の超人気直売所に学ぶ、生産者・店舗・お客「三方よし」のビジネスモデル

海蔵寺りかこ (KTMプラニングR代表)
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「ここで売るのが楽しいのです」 生産者とお客をつなぐ場としての直売所

 ここまでを見て、魅力的な店であることは十分ご理解いただけただろう。しかし気になるのは、生産者との関係を良好に維持しながら、年間を通じて安定的な品揃えを保つ秘訣はどこにあるのか、という点だ。

 生産者にとっては直売所以外にも販路はいくつもあり、しかも直売所の場合自ら商品を運び込み、売場に陳列し、在庫の把握や追加納品も行わなければならないという手間がかかる。さらに広島店周辺はベッドタウンであり、決して産地とは言えない立地。いわば“都市型直売所”であり、安定した量・種類の地場産品を展開することは難しいようにも思える。

 そのヒントを明かしてくれたのは、取材時、サラダ水菜を陳列していた生産者の山田さんだ。

 「他の生産者の水菜は110円だけど単色、うちのは150円だけど茎が赤と緑の二色。カラフルだからサラダにしてもきれいでしょう」――。山田さんは異業種から農業の世界に飛び込んだ。当初は市場出荷がメーンだったが、「出荷して終わり」という単調さに物足りなさを感じていたところ、知人から「とれたて元気市」を紹介されたという。

 「ここならば自分で育てたものを自分で値付けし、陳列し、お客さまに魅力を伝えながら売り込める。それが本当に楽しいのです」と山田さん。「もちろん売れない時もありますが、売上データと向き合いつつどうしたら売れるだろうと常に試行錯誤していたら、だんだんアイテムが増えていき、今では1年中何かしらを出荷できるほどになっています」と笑う。

店頭で店舗従業員と談笑する山田さん
店頭で店舗従業員と談笑する山田さん

 山田さんのように、都市圏で農業を営む場合、少量多品種の栽培で生計を立てるケースが多い。そのため年間を通じてさまざまな品種を多少にかかわらず直接持ち込み、売り込める直売所の存在意義は大きいのである。このような事情から広島店では、その日の納品が「1品」であっても販売は可能。実際に「今日はこれしか持ち込めるものがなくてね」と苦笑しながらなすを1本だけ売場に置く生産者の方もいた。

 直売所は「店舗」という形態ではあるものの、その実、生産者とお客を「つなぐ場」としての機能が大きいのである。翻って、筆者は食品小売業で「クッキングサポート」の運営や販促企画の立案など、「商品の価値を伝える」仕事に長く携わっていた。しかし「仕入れた商品」をどう訴求するかに集中しており、生産者の「喜び」や「やりがい」を創出するまでの取り組みはできていなかったように思う。そのことを深く反省した。

「お客に媚びない姿勢がよい」 お客からの意外な評価の背景

「とれたて元気市広島店」の運営メンバー。写真中央が東直樹場長
「とれたて元気市広島店」の運営メンバー。写真中央が東直樹場長

 もっとも、JA全農ひろしまも、とれたて元気市の開設当初から、そうした「つなぐ場」を創造できていたわけではないという。

 東場長は、「当初は出荷者の数も少なく、商品を持ち込んでもらえず、売場がなかなか埋まらない日々が続いた」と振り返る。販売イベントを実施したり、生産者とのコミュニケーションを密にしたりといった地道な努力の末、今日の“繁盛店”が出来上がったのである。

 「同じ品種でも、生産者さんの間で売れ行きは変わってくる。販売に苦労されている生産者さんには直接声をかけ、販売動向や袋詰めのコツ、さらには『こんな商品を栽培してみてはどうか』といった具体的なアドバイスまでするようにしている」(東場長)。こうしたコンサルテーションも奏功し、現在では約2000人もの出荷者を抱えるまでになった。

地道な努力と苦労の積み重ねが、現在の広島店の繁盛ぶりを生んだ
地道な努力と苦労の積み重ねが、現在の広島店の繁盛ぶりを生んだ

 そうはいっても、とくに青果は天候に左右されることもある。出荷者が増えたとはいえ、天気が悪ければ持ち込み量が減るし、食品スーパーのような満遍ないフルラインの品揃えはどうしても実現できない。お客から「○○はないのか」といった問い合わせもよくあるというが、「とれたて元気市がコンセプトとする『広島県産』で揃えられない場合は、その旨をご納得いただいている」(東場長)。さらに大規模災害などで長期間、一部の生産者から出荷がない場合は、「空いたスペースをあえて埋めることなく“空白”にしておく」と東場長は言う。「いつでもあなたの商品が入ってくることを待っています」というメッセージを売場で伝えるためだという。

 ともすると、「きれいごと」に思えるかもしれない。しかし、こうした取り組み一つひとつが直売所と出荷者の信頼関係を強固なものにし、結果としてお客に熱烈に支持される店をつくり出しているのだ。

 広島店にお客から寄せられた意見にこんな記述があったという。

 「お客に媚びない姿勢がよい」――。

 小売店として、顧客満足度を追求することは間違いなく重要なことである。しかし、日々食材をつくり出し供給する側の「喜び」を最大限にすることも、小売店としてまた重要な取り組みなのではないか。生産者、店、お客のそれぞれがお互いに出会い、コミュニケーションをとり、喜びを見出す。直売所はただ新鮮な地場産品を並べているだけではない。扱う商材を問わず、多くの小売店に「店のあり方」を問いただす存在であるように筆者は感じた。

■店舗情報

所在地 広島県広島市安佐南区大町東2-14-12
営業時間 9:00~18:00
アクセス

山陽自動車道「広島IC」より約2.5km
JR可部線・アストラムライン「大町」駅より徒歩約6分

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記事執筆者

海蔵寺りかこ / KTMプラニングR 代表

食品コンサルタント
1級色彩コーディネーター、カラーデザイナー、UCアドバイザー

株式会社KTMプラニングR代表。大阪府吹田市出身、太陽の塔を眺めながらバレーボールに明け暮れる少女時代を過ごす。ダイヤモンド・チェーンストア誌連載「販促の強化書」、店舗調査解説などを執筆。JA全農にてさまざまな国産農畜産物のSPA化と向き合う。惣菜メーカー、食品スーパー、データ分析等の各企業のサポートや各種セミナーも開催している。

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