コスモス薬品(福岡県/横山英昭社長)は、2019年5月期の決算を発表した。売上高は、6111億3700万円(対前期比9.5%増)と28期連続の増収。営業利益247億7500万円(同8.9%増)、経常利益272億9200万円(同8.1%増)と11期連続増益と過去最高を達成。当期純利益は191億8500万円(同8.8%増)とこちらも過去最高益となった。決算発表当日の横山社長の発言をまとめた(文責・千田直哉)。
都市型店舗は副業に過ぎない
「2019年5月期の新規出店は、関東地区3店舗、中部地区15店舗、関西地区24店舗、中国地区19店舗、四国地区6店舗、九州地区26店舗の合計93店舗を出店した。12店舗を閉鎖したので、期末店舗数は993店舗になった」
「人件費は高騰したが、上記のような積極的な出店と既存店舗売上高対前期比1.7%増(客数は0.2%減、客単価が1.9%増)により、増収増益と過去最高益を達成できた。『高品質な商品をより安く』という方針がお客さまに支持された結果という自負がある」
「商品的には、〈一般食品〉の売上高が3438億円(同9.7%増)となり、売上構成比では56.3%になった。また、〈医薬品〉は954億円(同11.2%増)、〈化粧品〉は642億円(同11.3%増)と伸びている。両部門については、接客を強化した結果が出た。当社のビジネスモデルは食品で集客して医薬品と化粧品で利益を取る。そのためには接客は、極めて重要であり、これは強化し続ける」
「前期は東京都内にインバウンド需要獲得を意識した都市型店舗を3つ出店した。ともにビルイン型の非自社物件で〈広尾店〉は40坪弱、〈中野サンモール店〉は約50坪、〈西葛西店〉が100坪強の売場面積だ。都市型店舗の特徴は、カンバンを付け替えたらどの企業なのか分からないところ。だから差別化しにくい。その分、安さで差別化をはかり、集客していきたい」
「しかしそうはいうものの、都市型にはいろいろなパターンがあるはずなので、バリエーションを豊富に用意することで立地対応したい。たとえば、広尾店は〈ドラッグ+調剤〉、西葛西店は我々の得意とする〈フード&ドラッグ〉という具合だ。しかし都市型店舗は、当社にとっては、あくまでも副業の位置づけに過ぎない。本業は郊外型だ。しかし出店できるのであれば都市型もどんどん出したい。今後、東京新宿や大阪心斎橋にも出店を予定している。現在、3店舗はともに順調なスタートを切っているが、実験なのでまだどのくらい売れるかは分からない」
「今回、都市型の広尾店と西葛西店には調剤薬局を併設している。これは、将来的な面分業時代の到来に備えてのこと。即座に収益性を考えているわけではない。だが、調剤薬局併設は、そのタイミングがきたら一気に郊外型にも広げる。調剤報酬削減の議論が進んでおり、今の状況を長く待ち望んでいた。ただ、調剤報酬が落ち切ってから、一気に参入することは大変なので、まず調剤薬局を併設してみた。薬剤師は都市部では確保できる。一方、地方は難しい部分がある。2020年4月に大幅な調剤報酬改訂があれば一挙に展開したい。もうひとつは薬剤師1人1日処方箋40枚制限というのがあるが、これが撤廃されるタイミングもある」
「一方、2020年5月から当社が得意とする食品満載型の郊外型ドラッグストアを関東地区に積極展開する。すでに埼玉県越谷市〈せんげん台〉には土地を購入し、ワンフロア(平屋)600坪タイプの出店を計画している。本格的な出店は、2021年5月期からで、年間30店舗程度の出店攻勢をかけていきたい。基本的に西日本と同じ考え方で出店を進める。関東はマーケットが大きいのでしっかり取りに行きたい。現在、千葉県、茨城県、埼玉県とその近郊の土地をリサーチしている。メーンは平屋になるのだが、500坪の土地が確保できるのであればピロティ型での食品満載店舗出店を考えていきたい。関東圏郊外も都市型店舗も収益性は保てる。コスト構造は異なるが、中心部に出せば商圏人口も大きなものになるので売上は見込めるからだ」
「もちろん、九州を含む西日本地区もまだまだ出店する。ドミナント出店が基本であり、面で地域を押さえる。それを優先させ出店する」
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2025年に1兆円を見込む
自前では生鮮3品を扱わない
「我々のライバルはドラッグストアだ。生鮮3品を扱わないので、食品スーパー(SM)とは競合しないという考えを持っている。いまのところ、当社が自前で生鮮3品を取り扱うことはない。今後、生鮮3品のニーズが増えてくれば導入や展開を考えるが、その際も自前ではやらず、コンセッショナリー(名前を出さない専門店)の導入などを検討したい。標準店舗面積の拡大については、そのときに考える」
「現在、ドラッグストア業界の再編がかまびすしいが、当社はM&A(合併・買収)には目もくれず、今後も自力出店で成長していきたい。当社は年間1500億円ほどの新店投資を行っている。だから、M&Aをやれないわけではないが、やろうと思わないし興味がない。
当社は店舗年齢が低いこと=競争力という考え方を持っている。新規出店すると3年間は赤字を覚悟する必要があるのだが、先の成長性は明るい。一方、買収した古い店舗の将来性には疑問を持つ。その店舗と当社の大型店舗を競わせたときはどうなのか? 当社には、勝つ自信がある。だからM&Aには食指が動かない。これから業界再編は進んでいくと思うが1社勝ち抜けの体制をつくりたい」
「2019年10月に消費税増税が実施されれば、デフレは加速し脱却がさらに難しくなるとだろう。しかも人件費が高騰しているので、小売業にとっては大変な時代が訪れるはずだ。消費者は、いまよりも価格に敏感になるだろうから、デフレ経済下では安く売れる企業が一番強い。だから安さに一層の磨きをかけなければならない。しかし安く売ったとしても、今後消費は冷え込むだろう。それを見越して、2020年5月期の既存店舗成長率は、前期よりも0.9ポイント減の1%プラスで計画した。なお、当社はすべて税込価格。消費税率が10%になっても変わらない。それでも安いと評価してくれるお客さまは多い」
「キャッシュレス決済は都市型店舗では一部導入しているが郊外型店舗では導入していない。支払い方法の多様性よりも安さをアピールしたほうがお客さま視点になっているという判断からだ。キャッシュレスは手数料が高い。これをお客さまに還元したほうがいいという考えだ。将来的に手数料が下がった段階で、キャッシュレス決済の本格導入を考えていきたい」
2025年に売上高1兆円を達成!
「次年度も積極的な出店と『高品質な商品をより安く』のモットーを堅持する。出店は、関東地区5店舗、関西・中部地区55店舗、九州・中国・四国地区30店舗の合計90店舗を計画、閉鎖は7店舗の予定で、期末店舗数は1076店舗と1000店舗を超える。年間の出店数は本来全店舗数1割増のペースにしたいが、4ケタを超え分母が大きくなってくるとなかなか難しいものがある」
「2020年5月期の業績予想は、売上高6585億円(同7.7%増)、営業利益248億円(同0.1%増)、経常利益273億円(同0.0%増)、当期純利益は191億9000万円(同0.0%増)を計画する。営業利益の伸びが鈍化していることがわかるだろう。それというのも理由がある。当社は予算をどのように作るかといえば、営業利益を対前年横ばいにするところから始めている。2020年5月期の場合は、消費税増税を見込み、安売りで消費者の信任を得たいと考えているから、上期の粗利益率は前期からは下がる、ということで上期は減益。通期ではフラットになるので下期は増益ということになる。そういう予算組みだ」
「現在、売上の14%を占めるPB(プライベートブランド)についてはさらにあげていきたい。利益改善にもつながるだろう」
「中長期の数値計画は2025年に売上高1兆円を目指している。当社は勝つための仕組みづくりが得意な企業だ。勝つための仕組みとはローコストオペレーションの強化に他ならない。この構築こそが当社のやるべきことと意識している。販売管理費は全社一丸となっておさえたい。マニュアルを制作しシステム導入など新しいものをどんどん取り入れて人手のかからないオペレーションを構築したい」