店舗数だけじゃない!? 庶民の食を支えるラーメンチェーンの現在地
「日高屋」に「田所商店」、ラーメンチェーンの現在
次に見ていきたいのが、「日高屋」の運営元であるハイデイ日高(埼玉県)だ。同社の創業は1973年、大宮市に中華料理「来々軒」をオープンさせたのが始まりだ。主力業態の「日高屋」は1号店を新宿東口に開店、その後20年で400店にまで拡大した。
店舗数では幸楽苑ホールディングスの背中を追うハイデイ日高だが、売上高は2015年度に僅差で逆転、その後は年を追うごとにその差を拡げている。ハイデイ日高の売上高は、コロナ禍前は増収基調にあり、2019年3月期には400億円の大台に乗せている。コロナ禍からの回復も幸楽苑より早く、2023年2月には黒字回復する見通しだ。
徹底したローコストオペレーションなど、似た部分も多い幸楽苑ホールディングスとハイデイ日高だが、店舗の立地戦略は大きく異なる。地方の幹線道路沿いに店舗展開する幸楽苑に対して、日高屋は駅前への出店を基本としてきた。駅前は「ちょい飲み」の客が多く訪れ、おつまみやアルコールによる客単価アップが見込めるためだ。
22年5月にハイデイ日高社長に就任した青野敬成氏は若干48歳。創業家というわけではなく、アルバイトから社長の地位までのぼりつめた生え抜きの経営者だ。一代で日高屋チェーンを築き上げた創業者・神田会長とタッグを組み、今後は新しい路線にチャレンジするという。
店舗戦略では、駅前一等地へ出店を基本としつつ、地方ロードサイドや繁華街など出店地のバリエーション増やすことで、さらなる成長をめざす構えだ。
もう1つ注目したいのが、味噌ラーメン専門店「田所商店」を運営するトライ・インターナショナル(千葉県)である。同社は現在、日本国内に156店舗、海外に11店舗(FC含む)を展開しており、チェーン全店売上高は100億円を超える。
社長を務める田所史之氏は、ラーメン・居酒屋で起業し、バブル崩壊で挫折した経験を持つ。そこから2003年に「田所商店」で再スタートを切ったかたちだ。もともと田所氏の実家は味噌の醸造を家業としており、「田所商店」の創業にあたっては「置き味噌」に徹底的にこだわったという。そうしたオーナーの思いがファンに伝わり、急成長につながっているというわけだ。
原材料費の高騰、慢性的な人手不足……と外食業界を取り巻く課題は当然、ラーメンチェーンにもあてはまる。業界共通の課題だけでなく、ラーメンチェーン固有の不安材料も頭をよぎる。ラーメンは一般的に嗜好性の強いメニューであり、チェーン店は飽きられやすい。実際に1980年代は全国どこにでもあった「サッポロラーメン」はすっかり見かけない。ラーメンチェーンは今後も「ラーメン好き」を引き寄せ続けられるのか。