ダンハンビー最高経営責任者 ギオーム・バクーヴィエ
「日本のデータビジネスを変える」総合商社とタッグを組み日本事業に本腰
──日本企業はダンハンビーと手を組むことで、具体的にどのようなプロセスでデータ活用を促進できるのでしょうか。
ギオーム われわれは小売企業それぞれのニーズやリソースなどに柔軟に対応し、データ活用をサポートするためのモデルを幅広く用意しています。
たとえば、データサイエンスにまつわる業務を一括してアウトソーシングしたい企業には、専属チームを派遣し、社内組織の一部となってデータを活用したサービスを継続的に提供します。一方、社内に専門組織を設置している企業には、データ活用のためのソフトウエアやツールを提供し、社内システムへの実装支援や必要な研修、トレーニングを実施しています。
──日本ではデータ活用に長けた専門人材が不足しているのも課題です。
ギオーム 現時点で、データサイエンティストやデータアナリストなど、データ活用に長けた専門人材を日本で採用することはたしかに難しいです。そのためダンハンビーでは、日本での合弁会社の設立にあたって、必要な人材を他国から招へいし、三井物産からも人材を派遣してもらいました。今後、カスタマーデータサイエンスの分野での事業環境や労働市場が成熟していけば、この課題は次第に解消されると思います。
──今後、日本で専門人材の育成についても手がけていく考えはありますか。
ギオーム ダンハンビーには、独自の育成プログラムやメソドロジー(方法論)を通じて、データ活用に長けた専門人材を数多く育成してきた実績があります。英国や米国、インドなどでは、統計学や数学の分野で優秀な大学ともつながりがあり、大学院や博士課程に在籍する学生をダンハンビーで受け入れるといった取り組みも行っています。人材育成にまつわるこれらの実績やモデルを応用し、日本でも専門人材の育成に取り組みたいと考えています。
データの効果的な活用がリアル店舗の価値を高める
──近年、日本の小売企業は「アマゾンにどう対抗するか」という点を強く意識しています。それをふまえ、データ活用の観点で日本の小売企業がやるべきことは何ですか。
ギオーム データを効果的に活用し“顧客ファースト”になることが重要だと思います。アマゾンは、顧客データを効果的に活用し、顧客をよく理解し、お客さまの期待やニーズを中心に据えた意思決定を行っています。このようなアマゾンの思考や姿勢に日本の小売企業も順応すべきでしょう。
小売企業の多くは、データを効果的に活用し、顧客インサイトをもとに意思決定するよりも、サプライチェーンの観点や調達先との取引条件の最適化を優先しがちで、必ずしもお客さまのニーズや利益にかなった意思決定をしているとは言い難いのが現状です。
──アマゾンやアリババなど、EC企業もリアル店舗の出店を加速しています。そうしたなか、日本の小売企業にはどのような優位性があり、それを維持するためにはどのような戦略が有効でしょうか。
ギオーム とくに食品の場合、既存のサプライチェーンはECのモデルとは適合していないのが現状です。品質の高い新鮮な食品を魅力ある価格で消費者に届け、これによって一定の収益を確保するためには、リアル店舗が必要なのです。そうしたなか、アマゾンが16年12月に開設したレジレス店舗「アマゾン・ゴー(Amazon Go)」に代表されるように、これまで培ってきたテクノロジーやデータ活用のノウハウなどを生かし、店舗運営コストを効率化しながら食品を含む商品を低価格で販売するといった動きも見られるようになってきました。
日本では、食品小売のサプライチェーンは非常に効率化されており、品質の高い新鮮な農作物を最適に輸送するためのインフラが整っている点に優位性があります。その優位性を維持するためには、アマゾンなどのEC企業を手本に、テクノロジーやデータサイエンスを効果的に活用して、店舗でのよりよい買物体験をお客さまに提供することが重要です。