ライフ創業者 清水信次さん、逝去 生前語った「日本の流通業の在り方」
会社をそれほど大きくする必要はない
──それでも競争は激化する一方です。やはり経営する立場だと規模拡大は楽しいものなのですか?
清水 楽しくなるというより、感覚が麻痺してくるのでしょうね。ランナーズハイのようなものです。いずれ、プッツンと切れてしまう。ぼくの先輩であり、仲もよかった中内㓛(ダイエー創業者)さんもそうでした。議論したり、一緒に遊んだりしているうちはよかったけれど、だんだんハイになってきて、あれもこれもと広げてしまった。
──そこで、「ちょっと待てよ」、と考える必要があった。
清水 その点、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊さん(名誉会長)は慎重です。「銀行はお金を貸してくれないもの、メーカーや問屋は商品を売ってくれないものだ」と常に肝に銘じています。本当に、“商い”を大切にしている。
──経営の第一線を離れ、現在はどのような立場で会社に関わっておられますか。
清水 ぼくは自分のすべきことは全部やったし、今は岩崎高治社長に後をゆだねています。
いつも、絶対に無理はしないように、会社はそんなに大きくなる必要はないと言っています。私は日本の流通業がどうなればお客さま、社会にとっていいのか、また日本のなかで最も正しい理想的な姿にするにはどうすればいいかについて考えています。
当社の岩崎社長も意識していて、従業員とのコミュニケーションも熱心にとりながら試行錯誤しているようです。ぼくが指揮を執っていた頃から考えると、この3年間で当社は、はるかによくなっていますよ。ありがたいことです。
仲間のチェーンストアも気づき始めており、日本の流通はかなりよくなってきたとは思いますね。