「外向き・上向き・前向き」に大転換せよ=日本チェーンストア協会会長 清水信次
政府・行政は、戦前・戦中・戦後、いまも変わらず
──野田佳彦総理大臣と消費増税に関して話をしたと聞いています。
清水 今年の2月5日に野田総理にお会いし、消費増税についての意見を求められました。食事をご馳走になり、買収されたと批判されるのも嫌なので、日本チェーンストア協会の井上淳専務理事に同行してもらい2時間半ほど話をしました。野田総理は大平正芳総理に似て非常によい男です。ただ、惜しむらくは、戦後生まれで圧倒的に経験が不足していることです。
野田総理をはじめ今の政府首脳、財務省は、太平洋戦争当時と同じ思考回路になっていると感じます。僕がいくら懇切丁寧に「今は増税する時期ではない」と説明しても「暖簾に腕押し」です。
日本は1941年(昭和16年)12月8日から1945年(昭和20年)8月15日まで約3年8カ月、米国と戦いました。日本軍が勝っていたのは始めの5カ月間だけです。その後の3年3カ月、日本軍は敗退を重ねました。しかし「負けた」という事実を公表しませんでした。戦艦大和も沈み、45年8月には広島と長崎に原子爆弾を落とされました。東京や横浜、大阪、神戸などの主要都市150カ所を爆撃されて100万人近い民間人が亡くなりましたが、それでも帝国陸海軍は本土決戦をやると言ったのです。
戦前、戦中を通じてどこかで戦争を回避したり、戦争を早期に終わらせることもできたはずですが、結局は日本が焼け野原になるまで戦争を続けてしまった。本当にめちゃくちゃな話です。
今回の消費増税の問題にしても、政府、財務省、そして主要なマスコミも増税、増税のオンパレードです。国民が望んでいるとか承知しているといったことはまったく関係ない。太平洋戦争を始めたときと同じです。だから僕は日本人とは何なのだろうと不思議でしようがない。
原子力発電所の再稼働の問題も同じです。専門家や原子力安全委員会が「安全だ」と言っている、だから再稼働すると野田首相は決めました。ですが原子力安全・保安院や原子力安全委員会が「安全だ」と言っても何の保証もありません。仮に福島第一原子力発電所のような大事故が起こり、大きな被害があったら誰が責任を取るのか。いったい誰が損害を補償するのか。
万が一事故が起こったら国が全責任を持って損害や被害を補償・補てんすると前もって決めてから再稼働するのであればまだ理解はできます。しかし、専門家や両委員会が「安全」と言っている、だから動かすと言う。そんな馬鹿な話はないでしょう。
「内向き・下向き・後ろ向き」で国が元気になるわけがない
──「社会保障と税の一体改革」関連法案の衆議院通過に伴い、6月26日には日本チェーンストア協会会長として談話を発表しました。
清水 現政権やマスコミは「内向き・下向き・後ろ向き」の議論しかしていません。
談話には、(1)東日本大震災の被災者の救護と復旧、復興への積極投資、(2)国家興亡の歴史は人材の有無に起因するから教育・養成に投資、(3)製造業を始めとする各分野の技術革新への積極投資、(4)貿易立国と資源確保のための調査研究並びに投資、(5)世界の観光国家をめざして、交通環境整備に巨大投資、(6)地震、津波、火災等防災に必要な、国民を守る大型投資、(7)高齢者養護設備、保育園等への大量投資、(8)食糧自給率を現状の30%台から倍増するための必要な投資──の8項目が喫緊の国家政策として不可欠だと記しました。この目的達成のために、毎年最低50兆円の政府保証紙幣を発行すれば、経済は活性化し、景気は上昇します。今の「内向き・下向き・後ろ向き」の流れを変えることができます。