SMの生き残りの選択肢は限られてきた=CGCグループ代表 堀内淳弘
「安売り競争に明け暮れているのは日本くらい」
──さて、CGCグループは12年に設立40年を迎えます。これを機に創業の理念をあらためて周知する『CGCウェイ』をまとめました。
堀内 そうです。加盟企業の経営トップがこの3年で47人も交代しましたので、協業活動の基本理念を再確認するためです。
実は、225社4兆2276億円の協業組織というのは世界にも成功事例がありません。企業の連合体が協会をつくり、独自商品の開発を行う例は欧州にありますが、物流や情報システム、販売促進、教育といった協業活動を行っているグループはほとんどありません。
フランスのコーペラティブチェーンであるルクレールは、基本的に1人のオーナーに1店舗しか持たせません。数店舗を持ち、売上規模が大きくなればなるほど本部に対する発言力が強くなり、運営に支障をきたすためです。ですからフランスでは1店舗当たりの店舗規模・売上規模が巨大化しました。
──欧州ではコーペラティブチェーンを含めた上位小売グループの寡占化が顕著です。日本も同じような状況になっていくのでしょうか。
堀内 そうだと思います。
大型店が多いイギリスやフランスには、実は「競合店」がほぼありません。自治体がつくる都市計画に沿った出店でないと新規出店できない仕組みになっていますので、簡単には出店できません。だから「競合店」がないのです。
オーバーストア化傾向に拍車がかかる日本とアメリカのほうが異常と言えます。パリやロンドンの都市部では若干競争がありますが、隣接する店同士が安売り競争をやっているのは日本くらいです。競合する店舗が多ければ優勝劣敗がはっきりしますので、企業の淘汰が進み、競争優位に立つ大手のシェアは高まっていくでしょう。
アメリカの製造業は、税引前利益率10%を確保できない経営者は失格とみなされます。小売業も5%の利益を出さなければなりません。日本もそうであるならば、卵を1パック10円ではとても販売できません。日本のSMは世界に通用しないビジネスなのです。さらに言うならば「義理と意地の商売」です。
──確かに日本の安売り競争は異常です。安売りする原資がまったくない中で、“出血サービス”しています。
堀内 そうです。そもそも安売りが本当にお客さまにとってよいことなのでしょうか? たとえば、冷凍食品は年中5割引。そうするといい商品開発の芽は断たれるし、商品が育ちません。冷凍食品は、やり方次第では、過去にはなかったような素晴らしい商品をつくることができますし、保存もききますので、これからの小売業界にとって非常に重要なカテゴリーであるにもかかわらずです。
また、われわれSMは地域密着が基本ですから、地域のお客さまにおいしい食品を提供することも大事です。安売り競争だけでなく、商品の品質をよくすることもSMの使命の1つだと考えます。