3年かけた足場固めで収益力回復、今期は攻めに転じる=京王ストア 内藤雅浩 社長
──そうした取り組みは、いつごろから始めたのでしょうか?
内藤 2006年からスタートした前中期3カ年計画の期間に、新たな情報システム「新営業商品管理システム」を導入し、09年から全面稼働しました。
新システムの導入によって、店舗ごとに週次レベルでの単品管理が可能となりました。すべての商品について、売上高、粗利益高、値引き額、ロス額、在庫数等を把握できるようになり、特売時の反応なども数字で管理できるようになりました。このデータを週次、月次で見てみると、売れずに動かない商品がわかります。このデータに基づいて売れ筋と死に筋に分けるABC分析を実施し、リピート購買率も加味しながら商品の改廃を実施していきます。リピート購買率が低くて、なおかつCランクの商品は無条件に排除する。こうすることで、2割程度は削減できると見ています。
新営業商品管理システムは、値引きロスや廃棄ロスの削減に大きな成果を挙げています。
LSP導入で収益力を回復
──京王線沿線も含め、京王ストアの出店エリアは不動産コストの高いエリアです。そうした意味で、ローコストオペレーションについては何をされていますか。
内藤 前中期3カ年計画で課題となった中に「EDLC」、すなわちエブリデイ・ロー・コストの確立というものがありました。
店舗段階の販売管理費で、いちばんコストがかかるのは人件費です。そこで、3年前から社内にLSP(レイバー・スケジューリング・プログラム)チームを立ち上げました。このチームが実際に店舗に入り、店舗作業の見直しを進めています。やみくもに頭数を減らすのではなく、人員配置の最適化に取り組んできました。
縦割りの部門ごとに動いていた作業の体系を見直し、1人の従業員が部門の垣根を越えて作業ができる「多能工化」を取り入れたことも、人件費の削減に寄与しました。実際、05年度に1店舗当たり59人だった従業員数は、10年4月現在50人程度まで減っています。これが、LSP導入による作業の見直しと、多能工化を取り入れたことの成果です。
また、経費も見直しました。たとえば、業務委託の際には相見積もりや競争入札を実施し、2カ所あった物流センターを1カ所に統合したことで、1億円程度のコスト改善になりました。
05年時点では、当社の経常利益率は1%を割り込む水準でしたが、08年度には世間の上場各社並みの2%を超える水準まで回復しました。こうした作業の見直しと諸経費の改善が、3年間で利益を押し上げた要因です。
──デフレ環境に陥って久しいですが、京王ストアの価格戦略について改めて教えて下さい。
内藤 昨年10月から、客数が前年実績を割り込むようになりました。既存店ベースで3~5%減です。ハウスカードを分析すると、カード会員のお客さまの減少は、それほど大きくないことがわかりました。中でも売上高上位3割の上位顧客の減少は少なく、下位顧客が他社に流れていました。