コンセプト、看板メニュー、SNS…行列店に学ぶZ世代に支持される店の作り方

2022/09/23 05:55
    佐藤 良子
    Pocket

    開業前からファンを作る

     こうした居酒屋『TOKI』のビジネス戦略以外でも、注目したい石原氏の仕掛けがある。

     コロナ禍中の2021年8月に開業した姉妹店の餃子専門店『TOKIPAO』では、前述の“特別な普通味”をコンセプトにした「餃子」をフードの看板に、そしてアルコールの看板には「ジン」を組み合わせた。これは開業前に餃子とジンの相性の良さに着目したことと、ジンの利益率が高く大手酒販メーカーが大々的にジンのキャンペーンを打ち出していたことから、今後の流行を予測したためだ。その目論見は当たり、現在ジンの認知は拡大中だ。

     また開業前には、コロナ禍における学生の貧困救済を目的にした「まかない学生食堂」を実施。これはSNSで発信することを条件に神戸市の学生に『TOKIPAO』の餃子を楽しめる「餃子定食」を無料で提供する企画だ。店にとっては餃子製造の練習ができ、ターゲットの若年層女性に開業前からPRできるというものだ。

    「今の学生は一人につき200人くらいのフォロワーがいるのが一般的。ならば1日30名の学生に定食を提供すれば、約2週間の実施期間中に神戸市の学生約8万人にリーチできる計算になります。さらに、当店を知ってくれた学生が、アルバイトに応募してくれました」

     こうして開業前からファンを作りながら、PRも広く行い、人材確保まで行った。

    TOKIの卵ポテトサラダ550円。味玉をのせ、黄身がとろりと流れるシズル感を演出。明太子や卵、エビ、牛すじといった老若男女が好きな食材を多用
    TOKIの卵ポテトサラダ550円。味玉をのせ、黄身がとろりと流れるシズル感を演出。明太子や卵、エビ、牛すじといった老若男女が好きな食材を多用

     興味深いのは両店共に特定の調理師を入れていないことだ。一般的には腕のいい調理師を雇い、独自性の高いメニューを開発して勝負するイメージが店づくりにはあるが、石原氏はこう話す。「今は有名シェフが、無料で素晴らしいレシピをWEB上で公開している時代。メニュー開発はこうしたレシピを研究し、エリアや客層に合わせて改良してオリジナルにしています。それよりも特定の人材がいないと回らないような店を作らないことが重要」

     手作りで美味しい味を前提としながらも、こうした考えからスタッフが訓練したら作れるレシピとオペレーションを組み、プレゼンテーションやシズル感などで付加価値をつけ、魅力的な商品にしている。

    「私が得意とするのは、流行の背景を分析すること。そして“何をどのように、誰に売るのか”を意識した上で、メニューに反映させ、SNSも駆使すること」と石原氏。誰もが好きなメニューに付加価値と話題性を加え、大ヒットを飛ばしている。

    1 2 3
    © 2024 by Diamond Retail Media

    興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
    DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

    ジャンル
    業態