コスト増で揺らぐビジネスモデル、「100円」にこだわるセリアの打ち手は
意外と知られていない「均一ショップ」の歴史
「さまざまな商品を同じ値段で販売する」という発想は古くからあり、江戸時代には「十九文見世」「三十八文見世」といった“均一店”が流行ったとの記録もある。
戦前には髙島屋が十銭ストアを開業し、当時の一般大衆からは「安からう悪からうも事実 だが十銭の値打は充分」と一定の支持を得ていたとも言われる。
戦後は、売れ残り商品を均一価格で叩き売る“バッタ屋”なども出現したが、現在と同じ固定型店舗の100円均一ショップが登場したのは1980年代とされる。
いわゆる「100円ショップ」が急成長したのは1990年代半ば以降。バブル経済崩壊に続く経済の低迷・賃金水準の下落などを背景に、消費者は一気に100円ショップを求めるようになった。商品コストのダウンも、100円ショップには追い風となった。グローバル化に伴い、人件費の安い中国などから格安の仕入れ価格で流れ込んできたのだ。
当初は競合していた総合スーパー(GMS)をはじめとした他業態も、上層階にテナントとして100円ショップを呼び込み集客につなげるなど、合従連衡が進んでいる。
揺らぐ100円ショップのビジネスモデル
根強い節約志向と積極的な店舗展開(22年2月末現在で8400店)をバネに100円ショップの勢いは衰えない。100円ショップでの1人当たり消費金額推計は月額635円、ここ10年で6割も伸び、すっかりわたしたち消費者の日常に溶け込んだ。市場規模は1兆円に手が届きそうな水準となっている。
ところが順風満帆な業界に、思わぬ伏兵が待っていた。資材価格高騰と海外での人件費上昇さらには物流コスト増など複合要因による資材コストアップだ。集客をねらってグレードアップしてきた店舗投資も、負担としてのしかかる
もともと100円ショップは、多店舗展開で固定費負担を抑えて薄利多売するというビジネスモデルだ。仕入れが上がってしまっては、100円で売っていけない。すでに競合他社は「300円」「500円」、さらには「1000円」と価格帯を広げ、客単価アップによる収益向上をめざしている。
そんな中、セリアだけはあくまで「100円均一」を死守してきた。もちろん100円にこだわっているだけでは、原材料費・物流費・人件費などあらゆるコストが上昇する中で確実にジリ貧に陥る。
セリアの強みは、消費者ニーズを巧みにとらえた商品づくりと、データに基づく効率的な業務オペレーションによる高い収益性にある。セリアは強みを生かしつつ100円グッズを消費者に提供していけるのか、これからが正念場だ。