DXでリアル店舗従業員の働きがいをつくることが重要なワケ
スタッフにDXの目的を伝え、変化を定着させる
さて、スタッフの生産性を高めることで「働きがい」を生み出し、変化した外部環境の中でも結果を出せる店づくりをする、という考え方をお伝えしたところで、冒頭のDXに話を戻します。
前述のように、業務効率化(DX)ツールを店舗に導入しても運用が上手くいかないケースが散見されます。それはスタッフの意識が変わっていないからです。スタッフは自分の仕事を変えたくない、変化したくないという「現状維持バイアス」に捉われています。ツール導入の目的は「接客時間を最大化する」ために、その他の業務のムダ・ムラをなくすことです。しかし、実際にはこうしたツールの導入目的がスタッフには伝わっていないことが多いのです。
また、店舗にはアルバイトも多く、毎日就業するスタッフが入れ替わります。店長と1~2週間、対面しないスタッフもいます。確かにそのような環境では、全員に目的を伝え、浸透させることは容易ではありません。
しかし店舗のDXには、スタッフ一人ひとりが正しく目的を理解し、何を変えるのかを理解してもらうための「情報共有」が不可欠です。そして前向きに対応・行動しているスタッフを日々評価することで、変化を定着させることが必要です。実際に、紙や口頭伝達ではこのような変化を起こすことは難しく、店舗をDXするには、ITツールにより「本部―店長―スタッフ」が1つのプラットフォームで情報共有し、仕事ができる状態をつくることが必須なのです。
店舗の「ムダ・ムラ」を削減し、付加価値の高い業務、重要な行動にスタッフを集中させることで店舗の労働生産性は高まっていきます。それを「店舗の風土やチーム文化」として定着させることで、さらに生産性は高まります。
推奨品の販売キャンペーンをスタッフ同士で競い合い、接客トークを共有し、高め合うようなつながりを深め、目標達成をめざすチームにつながっていきます。それをしっかりと評価し続ければ、スタッフが自分たちで店舗を盛り上げてくれ、まさに「働きがいがあり、生産性の高い店舗」になるのです。ITツールの導入が目的になるのではなく、「働きがいが向上し、店舗スタッフの潜在能力を開放する」――。そのようなDXが店舗には求められているのです。
次回以降は、今回の話を踏まえ、店舗DXで一定の成果を収めた企業の具体的事例を解説する予定です。
プロフィール
染谷 剛史 (そめや たけし)
1976年、茨城県生まれ。大学卒業後リクルートグループに入社。アルバイト・パートの求人広告営業を経て、営業企画・商品開発を担当。2003年、株式会社リンクアンドモチベーションに入社し、サービス業の採用・組織コンサルティングに従事。2012年に同社の執行役員に就任し、新規事業開発やカンパニー長を歴任した後、2017年にナレッジ・マーチャントワークス(現HataLuck and Person)を設立。「はたLuck」サイトはこちら
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