アマゾンの顧客リーチ拡大(オムニチャネル)戦略(3)
昨日の続きです。
アマゾン ジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長;以下、アマゾン)が顧客リーチ拡大戦略を進めるうえで非常に重視しているのが【利便性】である。
同社の【利便性】を端的に表しているのは、迅速な配送体制だ。
すでに当日配送では日本全土の77.3%、翌日配送では同95.7%をカバーしている。
日本列島に現在、9か所のフルフィルメントセンター(FC)を設置しており、ここを拠点に消費者の依頼先に配送している。
【利便性】ということで最近の画期的な取組は、日本郵便(東京都/高橋亨社長)とポスト製造業のナスタ(東京都/笹川順平社長)と同社の3社連携でメール便がすっぽり入る次世代ポスト「Qual」(クォール)を開発したことだ。
それというのも、アマゾンの配送の数十%は「不在」「女性一人暮らし」「子供の留守番」などの理由で一回で届けられずに再配達になっていたからだ。
アマゾンの取組は、受け取れない理由があるならば、受け取れるシステムをつくってしまえということ。その実現に向けては、消費者調査を実施し理由を明確にした上で解決策の立案に当たった。
今後、「Qual」の設置が進めば、ドライバーの効率アップや二酸化炭素排出減にもつながり、社会貢献も期待できるところだ。
もうひとつの【利便性】。これは米国の話だが、近未来のラストワンマイル戦略である「アマゾン Prime Air(プライムエア)」という取組もある。
消費者が注文してから、30分以内に「ドローン(Drone)」と呼ばれる無人小型飛行機で商品を届けるというものだ
2015年の開始を目指して米国で動いており、現在はFAA(米連邦航空局)による認可待ちの状態だ。
多くの規制があり、実現は簡単ではないけれども、夢物語としてではなく、アマゾンが真剣に考えている顧客リーチ拡大戦略の一手なのである。
同社が現在進出しているのは、米国のほか、イギリス、ドイツ、日本、フランス、カナダ、中国、イタリア、スペイン、ブラジル、インド、メキシコ、オーストラリアの13カ国。全世界には現在、89か所のFCがあるが、このサービスはFC周辺限定になると予想される。
11月25日(火)の最終回に続く。
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