進発
10月1日、原信ナルスホールディングス(新潟県)とフレッセイホールディングス(群馬県)は、経営統合を完了し、アクシアル リテイリング(新潟県/原和彦社長)としてスタートを切った。
その詳細については、『チェーンストアエイジ』誌2013年10月15日号をご覧下さい。
私も昨日、午前9時45分から新潟県長岡市の本部で開かれた記者会見に出席した。
会場で配布されたプレスリリースに目を通すと、ある言葉が気になって仕方ない。
「アクシアル リテイリングの進発に関するお知らせ」というタイトルの《進発》という2文字だ。
《進発》とは軍隊が出発するときに使う言葉であり、いかにも勇ましくてそれはそれでよいのだが、こうした場で使われているのを見たことがなかった。
そこで即座に思い浮かべてしまったのが、アークス(北海道)の横山清社長だ。
横山社長は、言葉をとても大事にする経営者の1人。
造語の天才であり、「少子高齢化や過疎化の進展によって市場が縮小すると、競争が激化し、その結果、寡占化が起こり、勝ち残った企業の規模は逆に拡大する」という複雑な現象を「縮小拡大」という四字熟語で見事に表現した。
また、「デカップリング」や「クリティカルマス」「センチペイド・マネジメント」「創発」といった人口にはあまり膾炙していないような言葉を好んで使う。
かつて『チェーンストアエイジ』誌上で「撥条」という単語に【はつじょう】とルビを振ったところ、「ここでは【ばね】と振って、とお願いしたじゃない」と叱られたこともある。
話を会見会場に戻そう。
なぜ、横山社長が思い浮かんだのかと言えば、以前、アークスと原信ナルスホールディングスには、合併話があったが、原信一前社長の死去にともない、立ち消えになった過去があったためだ。
そこに《進発》というあまり使わない言葉があるので、この経営統合のとても近いところに横山社長が存在して、アクシアル リテイリングとの合併話が再び進んでいる、と想像したのだ。
そう考えると、居ても立ってもいられなくなり、つい手を挙げて質問してしまった。
「3つめは、枝葉末節のような質問です。プレスリリースで《進発》という文字が使われていますが、どなたが考えたのですか?」。
即座に、答えてくれたのは司会進行を務めていた山岸豊後専務取締役(広報担当)だ。
「それは私です。初めは、《誕生》と書こうかとも思ったのですが、今回は原信ナルスホールディングスにとっては社名変更になるため適切ではありません。《スタート》という言葉を使うとカタカナが続くので嫌だな、ということで《スタート》に代わる言葉を探して《進発》を使いました」。
「なるほど。納得です」。
大事な記者会見の時間を邪推とつまらない質問で潰してしまってすみませんでした。
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