第4の柱はeコマース? ウォルマート・イノベーション(下)
昨日の続きです。
失敗したら即撤退!
こうしたかたちでウォルマートはイノベーションに次ぐイノベーションを繰り返してきた。ただし、イノベーションは必ずしも成功ばかりではなく、失敗はつきものだ。
実際、ウォルマートにも失敗は数多い。たとえば、ヨーロッパのハイパーマーケットを模して出店した「ハイパーマートUSA」(1987年)は巨大な売場面積がネックとなり、固定費がかさみ、振るわなかった。最近では、「マーケットサイド」(2008年)というフォーマットを出したが、これも軌道に乗らなかったため即座に撤退している。
さらには、国際事業においても失敗はある。ドイツ(1997年参入)と韓国(1998年参入)に進出するもうまくいかずに両国ともに2006年に撤退を決めている。
強い企業は、新規事業を立ち上げ、失敗すると判断するや、撤退の速度も速いという共通の特徴があるが、ウォルマートも出口戦略にも滅法、長けていると言っていい。
これについては、2代目社長のデビッド・グラスが「サム・ウォルトンが他の人々と違っている点が2つある。1つは、毎朝、何かを改善しようと決心して起床すること。第2は、間違いを犯すことを恐れないことだ」(『私のウォルマート商法』(サム・ウォルトン著、渥美俊一+桜井多恵子・監訳:講談社+α文庫)と語り、自らもそうありたいとしているほどだ。
そして、繰り返される試行錯誤はDNAとして現在に至るまで受け継がれていると言っていい。
4事業CEO(最高経営責任者)が登場
さて、2013年1月期におけるウォルマートの売上高は、4661億ドル(対前期比5.0%増)。営業利益は278億ドル(同4.7%増)、純利益は170億ドル(同7.8%増)で全世界に69の店舗名で1万773店舗を展開している。
これだけの企業規模に拡大しているにもかかわらず、ウォルマートはさらなる成長に貪欲だ。現在、次の投資分野として最も注力をしていると見られるのがグローバルeコマース事業である。
ここに巣づくる巨大なモンスターは言わずと知れたアマゾン・ドット・コム。現在、同社の売上高はウォルマートのほぼ13%(610億ドル)、しかも赤字である。しかしながら、株式時価評価額はウォルマートの2分の1と投資家からは絶大な支持を受けている。
この大きな難敵にどう対抗していくのか?
同社は、CBSインタラクティブからニール・アッシュ社長をヘッドハンティングし、グローバルeコマース事業を立ち上げ、世界一の小売業にふさわしいポジションを目指している。そして、これこそがウォルマートの最大の課題であり、次期成長戦略の根幹になるといえる。
もちろん、国内事業(ビル・サイモンCEO)、国際事業(ダグ・マクミロンCEO)、サムズ・クラブ(ロザリンド・ブリューワーCEO)という3つの既存事業も平行して強化しなければいけない。
以下では、これら3基幹事業のCEOおよびグローバルeコマースのニール・アッシュCEOが次期成長戦略を語ってくれた。
世界最大の小売業であるウォルマートは何を考えているのか?
この特集を読んでいただければ、少しは理解できるはずだ。
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