ガラパゴス化と流通業界
競争にさらされてこなかった企業は、いざ、競争状況に直面すると馬脚を表し、弱さを露呈してしまうものだ。
大規模小売店舗法が華やかなりし頃、この法の運用が厳しいエリアとそうでもないエリアがあった。
運用の厳しいエリアでは、新規出店があまりない。だから、既存店は既得権益を守り、大きな革新に努めなくとも、着実に売上や利益を計上することができた。その結果、「強い企業」としてマスコミにもてはやされたりした。
ただ、そのことは、その企業を“ガラパゴス化”※させ、弱体化させる引き金になった。
大規模店舗法が緩和され、玉手箱が開けられた途端、「強い企業」の神話の多くは、音を立てて崩れ、そのドミナントエリアに新たに参入してきた企業に駆逐されていったのだ。
一方、大規模小売店舗法の運用が比較的ゆるいエリアにドミナントを構えていた企業は、生き残りを賭けて、競合他社と決死の形相でしのぎを削り合い、体力を付け、技術を磨いた。
そして規制が緩和されると、他のエリアへの出店をどんどん推し進め、企業規模を拡大していった。
強固なドミナントエリアを構築するがゆえに競争にさらされず、その快適性に胡座をかき、自己否定や自己革新を繰り返してこなかった企業ほど、競争が本格化した際には、比較劣位に立たされてしまうことがわかる。
まして今や、コンビニエンスストアが生鮮食品の扱いを本格化させ、都市型小型スーパーが続々登場、ドラッグストアは食品の安売りで集客を増やし、アマゾンなどのネット企業は急成長を繰り返している。
非食品市場も同様であり、流通業界全体が新しい競争局面を迎えている。
我が社は“ガラパゴス化”していないかチェックし、打ち手を講じ、新しい競争に臨みたいところだ。
※孤立した環境(日本市場)で「最適化」が著しく進行すると、エリア外との互換性を失い孤立して取り残されるだけでなく、外部(外国)から適応性(汎用性)と生存能力(低価格)の高い種(製品・技術)が導入されると最終的に淘汰される危険に陥る(ウィキペディア)
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