見るべきものはなかった
今日は、『チェーンストアエイジ』誌編集部の内輪話をちょっとだけ書きたい。
編集部は、毎週月曜日の早朝に編集会議を開いている。
会議では、編集部内の情報共有化を図るために、まず各人に先週の報告と今週の予定を話してもらうのが常だ。
すると、「先週水曜日に、B店に行ったが、1ヶ月前に出したA店とまったく同じなので、取り立てて見るべきものはなかった」などと発言する者がいたりして、月曜日の朝一番からがっかりさせられてしまうことがある。
もちろん、その責任は上司である私にあるので、すべて私が悪いのだが、それにしても、「見るべきものはなかった」とはけしからん、と心底思うのである。
「見るべきものはなかった」と言ってしまう原因はいろいろあるだろう。
そのもっとも大きなものは「慣れから生じる決めつけ」だと考えられる。
そこで思い出したのは、2012年の大ベストセラーに輝いた阿川佐和子さんの『聞く力』(文藝春秋社)だ。この本には、極論すれば、ひとつのことしか書いていない。
「決めつけるな!」ということだ。
例えば、タレントの萩原健一さんのインタビューでの出来事を例に上げて、「こっちの話が面白いに違いない。あっちの話はそんなに面白くないだろう。聞き手が勝手に決めつけることが、どんなに危険であるかを、その日、つくづく思い知りました」(P72)。
また、俳優の渡部篤郎さんのケースでは「人は皆、自分と同じ顔で、喜んだり悲しんだり寂しがったりするとは限らない。私が『楽しくなさそう』に見える人だって、心のなかで跳び上がるほど楽しいと思っているかもしれない。だから勝手に決めつけるのはよそうと」(P120)。
「『おそらくこういう人だろう』と当てをつけてお会いしてみたら、『こんな人だったのか。意外だねえ』という結果で返ってくるケースが少なくないということです。それは当然で、それまで自分たちが認知していた相手のイメージは、その人のほんの一部に過ぎなかったからです」(P142)。
先日、このBLOGで紹介した『ウォルマートの成功哲学 企業カルチャーの力』(ダイヤモンド社刊)の中に出てくるウォルマート創業者の故サム・ウォルトンと筆者ドン・ソーダクィストの店舗視察におけるエピソードにも通底しているものがある。
http://diamond-rm.net/articles/-/7513
それと同じように、ある経営者は、「森羅万象、これ師なり」と明言しており、その謙虚な姿勢には本当に感服させられる。
そこまでしなさいと強要するつもりはないが、「見るべきものがなかった」と言う前に、まず取材先の良いところを手当たり次第、10個挙げてみるなどの姿勢は欲しいものである。
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