「前始末」のすすめ
イトーヨーカ堂(東京都/亀井淳社長)の創業者である伊藤雅俊さんの言葉に「前始末」というのがある。事前準備と段取りを徹底することを意味している。「失敗のあと始末とは別に、失敗しないための前始末というのも大事ではないかと思います。失敗を極度に恐れる必要はありませんが、失敗せずにことが運ぶにこしたことはないからです」(『商いの心くばり』:講談社刊)。
『チェーンストアエイジ』誌編集部では「冷蔵庫理論」と称して、「前始末」の徹底を推奨している。これは、帰宅後に冷えたおいしいビールが飲みたければ、出勤前に冷蔵庫に入れればいい、という単純なものだ。企画、執筆依頼、アポ取り、取材、執筆…すべて前倒しでこなせば、締め切り前にあたふたすることはないし、ミスも防げる、事態の急変にも対応できる、などいいことづくめだ。
そして、秋の風音が聞こえてくると、流通業界でも《予約販売》という名の「前始末」商法が始まる。「ボジョレーヌーボー」「クリスマスケーキ」「おせち料理」「年賀状印刷」…。これらにしても、競合他社に先行できるだけでなく、閑散期の工場利用でコストを減らし、需要予測の精度アップで廃棄削減にもつながるなど相当なメリットがある。先手必勝。「前始末」恐るべし、である。
『チェーンストアエイジ』誌2012年10月1日号
千田直哉の続・気づきのヒント の新着記事
-
2024/09/02
魅力的な売場…抽象的な誉め言葉の意味を明確化するために必要なこととは -
2024/08/02
日本酒類販売社長が語る、2023年の酒類食品流通業界振り返り -
2024/07/03
「何にでも感激する経営者」の会社が業績が良い“意外な”理由 -
2024/06/07
経費率16%なのに?ローコスト経営企業が敗れ去るカラクリとは -
2024/05/23
キットカットをナンバーワンにしたマーケター「アイデアより大事なこと」とは -
2024/04/15
スーパーマーケット業界のゲームチェンジャー、オーケー創業者・飯田勧氏の経営哲学とは