味の素、2012年は「ファン作り活動」に専心する
2012年1月11日、味の素(東京都/伊藤雅俊社長)は、「2012年春季 製品試食説明会」を開いた(@品川プリンスホテル)。横山敬一食品事業本部長の話をまとめた(文責:千田直哉)
昨日、ミャンマー連邦共和国から帰国した。私の滞在中に最大都市ヤンゴン近郊に同国初の経済特区が新設される、と報道があった。敷地が約13平方キロメートルで日本、韓国、その他の国の3つにゾーン分けして工場を誘致するのだという。
ミャンマーはいままさに国が開かれようとしている。動きは非常に活発化しており、2012年はミャンマーにとってのターニングポイントになると考えられる。
人口5900万人、国土面積は日本の1.8倍。国民の90%が敬虔な仏教徒であり、穏やかで優秀な人材が豊富だ。非常に潜在性のある市場である。
味の素は、戦前の1930年代から市場を開拓してきた。1990年代に現地法人を設立。しかし、《味の素》の輸入禁止ということもあり、2000年に休眠会社になった。
GDP(国民総生産)は740ドルと低いが、その割には市場には新鮮な食品がたくさん並び、国民は豊かな生活を送っている。
《味の素》は、ずいぶんと売られており、シェアはほぼ100%と言っていいが、その大半はよくできた偽物だ。売り手も買い手も本物と偽物を見分けながら、商売をしている。価格は本物が1.5倍ほど高い。
ただ今後、国が開かれ、規制緩和が進んでいく中でわれわれも事業が再開できるように動いていきたい。そんな新しい市場を開拓しながら、2012年も成長を続けたい。
一方、国内市場に目をやると2011年の味の素は、家庭用は内食回帰により、《味の素》《ほんだし》《コンソメ》《中華だし》《Cook Do》などのロングセラー商品が好調に推移した。
2012年は「ファン作り活動」を進めていきたいと考えている。
大事なのは、「多面的な価値の提供」だ。安全性や一食一食を重視するような生活者が増える中で単身世帯の方や男性が調理するようになっている。
そうした需要に対して、既存のロングセラーブランドの幅広い用途を提案し、家庭のキッチンや食卓に新しい価値を提案していきたい。
この実践に向けて、「コンビニめしの掟」という5項目をつくった。
1.コンビニで買える商品のみで(料理を)完成すべし
2.火や包丁を使わずに作るべし
3.「かける」「まぜる」「のせる」で作るべし
4.驚きの組み合わせを勇気を持って試すべし
5.最小の手間で最高の感動を届けるべし
というものだ。「簡単・楽しい・おいしい」料理が誰でも作れるような提案に努めたい。
また、情報経路の多様化に対応するために、TV、新聞のほか、インターネットによる発信に力を入れる。「商品詳細情報」サイトをリニューアルして、主な国産原料の産地情報を提供している。
今後、「ファン作り活動」は、従来のブランド別深掘りモデルに加え、全ブランドを横断的に括るとともに使用年数を絡めたクロスセル(LTV)マーケティングにシフトさせる。
生活者1人が人生の中で、どれだけわたしどものファンとして、味の素の商品群を使ってくれるかをテーマに、みなさんにもっともっと愛される味の素ブランドにしていきたい。
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