事実は多面体である
『チェーンストアエイジ』誌のような流通専門誌の役割について考えることがある。
たとえば、一般紙誌で批判の的になっているような方に登場してもらうときには強くそう思う。
この場合、一般紙誌に便乗して、同じように批判記事を掲載するのもひとつの方法だが、私は、犯罪者でないのであれば、当事者の意見や主張をしっかり聞き、書きとめておくという立場を取りたい。
ノーベル平和賞を受賞した南アフリカ共和国のデズモンド・ツツ主教が語っていた「事実は多面体である」という言葉が常に頭のどこかにあるからだ。ひとつの事象を把握しようとするならば、あらゆる角度からの視点で観察しなければいけないという意味だ。
そして、もし事実が多面体だとするならば、雑誌の限られた紙数の中ですべての視点から見た事象を網羅することは不可能と言っていい。だからこそ、それぞれのメディアは、独自の視点(=切り口)やコンセプトを持つことで編集に当たっているし、実際にメディアのアイデンティティはそこにあると言える。
いろいろな視点があるということは決して悪いことではない。最終的には、読者や視聴者、聴取者によってメディアの評価は下され、メディアも淘汰の道を歩むことになるからだ。
ただ、多くの視点があるからこそ、データや数字は、どのメディアを見ても統一されていなければおかしい。互いに異なるデータや数字を根拠にしていては議論がかみ合うわけはない。
それだけにデータや数字を主体にした特集記事を編集するに当たっては気を使う。
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