お宅、大企業病にかかってますよ
こういう仕事をしていると、訪問した企業が“大企業病”に罹患しているかどうかを30分程度で判断できるようになる。企業の窓口に当たる方と話しているだけでバックボーンの組織体が透けて見えてくるからだ。
社長や上司を盾に話をし始めたら、ちょっと注意だ。自分の考えを言わず、「社長や上司がこう言っている」という論法が多くなる。
大企業病のもうひとつの症状は必要以上に立派な本社にある。小売業の場合、本社は利益を生み出さない。建物に罪はないのだが、素晴らしく快適な要塞で過ごすうちになぜか住人の心は荒んでいく傾向が強い。
規則にがんじがらめで融通が利かなくなるというのもチェックポイントだ。多くの人間が勤務しているから、規則を設けなければ企業運営は危うくなってしまうのは分かる。ところが規則ありきで、順守ばかりに目を光らせていると、規則の番人が偉そうにし始め、官僚主義がはびこる。その結果、企業への貢献度はそれほど高いとは思えない規則の番人が力を持ち始める。
さらには、本社を見ている社員が厚遇され、顧客を見ている社員はなぜか冷遇されていくというのもよくあるパターンだ。その結果、支社には情熱的な人間がいるけれども、本社には感情のない能面のような顔をした人ばかり、なんてことは枚挙にいとまがない。
そしてこうなってしまうと、もう目も当てられない。
だが、罹患の診断を短時間で下せたとしても、私の立場では、「お宅、大企業病にかかってますよ」とは、なかなか言えない。
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