「無意味」なチキンレースをやめ、“自社探しの旅”に出よう

2011/04/02 18:38
Pocket

 小売業には、「なぜ、そこまでしなければいけないのか?」と首をかしげてしまうような不思議がある。

 「オーバーディスカウント(行き過ぎた安売り)」「オーバーサービス(行き過ぎたサービス)」「オーバークオリティ(行き過ぎた品質)」のことである。

  そのことについては、2010年5月14日のBLOGでも書いた。(http://diamond-rm.net/articles/-/3620

 

 たとえば、「オーバーディスカウント」であれば、「特売」の御旗のもとに、1つ売るごとに赤字を垂れ流すような商品を嬉々として売り続けている。一消費者としては、赤字を被ってまで安い商品を提供してくれる小売業に感謝感激だが、そのことで店がつぶれてしまっては元も子もないし、やはりどこかおかしい。

 

 「オーバーサービス」なら、ネットスーパーを挙げることができる。

 通常、小売業の店舗で働く従業員は、消費者に相対でカートを押し、ポーターのように働くことはない。理由は子供でも分かる。売上にコストが全く見合わないからだ。

 ところが、“ネットスーパー”という名のフィルターを通した瞬間、店舗で働く従業員は、消費者の指示されるがままに、商品をピッキングして自宅の玄関まで運んでくれる。しかも、ある一定の購入金額を超えれば無料だ。これでは、いくら売り上げが立っても、黒字にはほど遠いビジネスだ。(http://diamond-rm.net/articles/-/4111

 

 どうしてこんなバカなことが起こってしまうのかと言えば、多くの小売企業はライバル企業の存在ばかりを気にしているからである。

 そして、「競合他社がやるから対抗上せざるをえない」という妄想に由来するチキンレース(※)を繰り返している。「ディスカウント」「クオリティ」「サービス」の各分野で、誰かが先にブレーキを踏むまで度胸試しを続ける。

 しかしチキンレースの行き着く先には、「無意味」の3文字が待っているに過ぎない。

 

 店舗内の照度も同じようなものだ。自社で確固たる基準を持たないから、どこまで明るくすればいいのかわからない。その結果、多くの小売業において、自社店内の照度は、同業他社が決めるような不思議な現象が起こっていた。

 

 いまは首都圏の小売業の店舗内は、一様に薄暗いけれども、さして支障があるわけではない。

 電力不足は、「行き過ぎ」の不思議やチキンレースを抜本的に見直し、正常化を図るには、いい機会ととらえたい。

 薄暗さの中で、どんな新しい照明ができるのか、知恵を絞る競争をしたい。

 

 東日本大震災を受け、世の中には沈滞ムードが漂うが、小売企業にとっては「これでいくんだ!」という自社の確固たる基準を見つける“自社探しの旅”に出るには、とてもよい機会なのだと思う。

 

 

 ※チキンレース(英:chicken race)とは、別々の車に乗った2人のプレイヤーが互いの車に向かって一直線に走行するゲームである。激突を避けるために先にハンドルを切ったプレイヤーはチキン(臆病者)と称され、屈辱を味わう結果になる。(ウィキペディア)

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態