ファーストリテイリング2010年8月期決算実況中継(3) 中国以外の生産は3分の1が適正
(昨日の続きです)
尖閣列島の問題などもあり、生産地、消費地としての中国のカントリーリスクが取り沙汰されている。
我々は、現在、中国以外の生産拠点づくりに努めている。我々の進むべき方向は、ずっと前から決まっていて、「グローバル企業」あるいは「世界一」になるということだ。
バングラデッシュはもちろん、それ以外の国にもリーチしている。これまで中国一辺倒だったものを、「中国+その他の国」といったところで、アジア一円に拡大したいと考えている。
だが、それは中国から撤退することを意味しない。中国もいままでどおり生産地として重視している。適正な水準は3分の1くらいが中国以外の国で占めること。当面はその構成比でいい。1~2年以内には、そうなると思う。
また、中国国内では、生産スペース確保の問題やコストアップの問題が現出している。
ただし、我々のつきあっている取引先は、中国を代表するような本当に良い工場で、我々との付き合いも長く、優先してくれている。多少影響は出るかもしれないけれども大したことはないと楽観している。
それとコストアップについては、世間で報道されているほど、問題ではないと考えている。これは中国が近代化していくプロセスでのものととらえているからだ。
日本でも経済成長をするときに、年率何%と賃金が上がったものだ。ところが、それが永続的に続くことはなかった。このことを振り返れば一目瞭然だ。
我々は、これまで中国で日本企業として中国の経済成長にかなり貢献してきたと自負している。また中国の取引先の経営者も素晴らしい人たちで、工場の経営者の人には人民代表の方もいる。
本当に正しい経営をしていれば、別に問題はないだろう。
中国とは、一過性でさまざまな問題は起こるかもしれないが、長い目で見ればそんなに大ごとではない。
中国での出店スピードが減速しているように思われるかもしれないけれども、出店する前に経営者や店長の育成をしなければならない。それをするには時間がかかるので、ますその強化をしたい。
いまアジア一円で現地の人で最優秀層を採用して、その人たちを将来経営管理していくことを考えている。いまの出店数は確かに少ないが、来期ぐらいにはかなり出店数は増える。次の10年間で1000店舗を出店する計画は変えていない。
いまや1ドルが70円台に突入しそうな勢いの円高が定着している。我々にとっての円高直接的なメリットは仕入れ原価が下がるということだ。ただし、いまのような円高は、日本の実情には合っていない。日本の景気や各企業の採算性を考えれば、いまの円高はマイナスだと考えている。いまの円高は我々にとっても適正な水準ではないと思う。
今後、M&A(合併・買収)については、チャンスがあるならぜひやりたい。円高というのもそうだし、欧米でネットワークを急速に大きくしたいと考えれば、M&Aも必要だ。
ただ、我々のいまの現状を考えると、第1プライオリティは自力で成長すること。その次がM&Aということになる。
2011年8月期は増収減益の予算を組んでいる。以前は、増収減益は減収減益よりも悪いと言っていた。できれば、今期も増収増益に持っていきたいと考えている。
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