「こんな企業はダメだよなあ」と思ったら、本当にダメになってしまった
もう22年も前のことだからとっくに時効の話だ。
1989年ごろ、秋田県の本金西武(現:秋田西武)の階上にある秋田ビューホテルの入り口でエレベータを待っていた。
本金西武は、秋田市の百貨店である本金と西友(東京都)の出資で設立された企業。1988年に西武百貨店の子会社になったばかりだった。
すると黒いスーツを着た2人の男が「そこをどいてください」と言う。
「お客に対して『あっちにいけ』とは失礼だなあ」と腹立たしく思っていると、2人の男は実にスピーディーに赤いカーペットを敷き始めた。
「なんだ、なんだ」と訝しがっていると、1人の小柄な男性が一瞬のうちに目の前を通り過ぎ、私が乗るはずだったエレベータに数人で乗り込んで勝手にドアを閉めてしまった。
「地元の有力者? 国会議員? 大統領?」と想像をめぐらせたが誰も思い浮かばない。
売場に立ち寄り、店の方に聞くと、「ああ、それはT.Sさんですよ。今日、いらっしゃっているはずだから」との返事――。当時のT.Sさんは、Sグループの代表であり、グループも絶頂期。ようやく「なるほど」と合点がいった。
たぶん、側近の従業員の行き過ぎた行為であり、別にT.Sさんが指示したわけではないのだろう。
けれども、「こんな企業はダメだよなあ」と思ったら、数年を待たずに本当にダメになってしまった。
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