インタビュー:個人向けプロアドバイザー300人、自前で養成=りそなHD社長
[東京 29日 ロイター] – りそなホールディングスの東和浩社長はロイターとのインタビューで、個人営業部門に独立系金融アドバイザー(IFA)並みの技量を備えたプロフェッショナル営業職員を2022年度までに300人配置する方針を明らかにした。7月に企業研修組織「りそなアカデミー」を設置し、自前で養成する。
りそなはスマートフォンを利用した口座サービスで利用者層の拡大を図っているが、資産運用の相談業務では対面チャネルが重要と位置付け、コンサルティング力を高めるために、高度な専門知識を備えた営業職員を増やす。
現在、全支店で個人向け営業を担う職員は1500人超いるが、プロフェッショナルな営業職員を年間80人程度ずつ増やす。希望者の中から選抜し、30日間の研修を実施。「ファイナンシャル・プランニング技能検定1級」水準を目指し、卒業試験を通ればライセンスを付与する。東社長は「基本的にIT(情報技術)では差別化にならない。人材の育成が一番の差別化になる」と語った。
IFAは、証券会社などの既存の金融機関に属さず、顧客サイドに立って資産運用の助言をする。国の登録を受け、証券会社などの金融機関と提携して金融商品の売買仲介をしており、フィディーシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)が浸透する中、広がりを見せている。
インタビューの詳細は以下の通り。
――リテール部門の対面チャネルをどのように考えているか。
「スーマフォフォン向けアプリによる口座サービスも進めているが、基本的にはITは差別化要因にはならないと思っている。一時は差別化できるかもしれないが、結局は他社が同じようなサービスを作ってくる可能性がある」
「金融サービス業である銀行の強みは人材だ。プロ人材を育てることを考えなければらならない」
「7月から『りそなアカデミー』という教育機関を作り、IFAレベルの人材を育てる。人材の育成は簡単にまねできないので、一番の差別化になる。1年ですぐに差が付くというわけにはいかないだろうが、10年ぐらいたつとギャップが広がると思う」
――そうした人材は、どのような効果を出していくか。
「今の世の中の流れであるフィデューシャリー・デューティーを見ていると、営業職員はどっちを向いて仕事をしているのかと問われる。会社の方だけを向いていたら、簡単には営業できない状況になってきている。顧客に寄り添っていかなければならない」
「さまざまな金融商品の中で、りそなのものが良いというのであれば、りそなの商品を、そうでなければマーケットには他にもいろいろな商品があるので、そういう商品を提供するということもあり得る。そういう考え方があれば、商品開発の進め方なども変えられ、プラスの影響が出てくる。会社が作った商品を単純に押し付けていくという時代は、完全に終わった」
――リテール業務で言えば証券機能がないが、必要ないのか。
「将来的には欲しくなるかもしれないが、全部を自前でやるのがいいかどうかは、考えなければならない。どっちを向いて仕事をするのかということで言えば、会社の中にある機能だけを使うという発想になりがちだ。顧客のための商品を選別する力を付けていく方が重要なのではないかという議論をしている。何も商品が自分のところに全部ある必要はないと思う」
――さらに経費率を下げる必要はあるか。
「まだ、下げられる余地は相当ある。実は、リストラ時代とも言われているので、意外と手をこまねいていたところがある。しかし、そうするとほこりはたまってくる。経費率は現在65.2%だが、60%を切れる水準まで持っていきたい」
「預貸金業務が非常に厳しく、粗利が落ちているので、粗利に合わせて経費のコントロールもしなければならない。まだまだ効率化できる部分はある。リテール業務は以前から言っているが、経費コントロールがしっかりできないと絶対に無理だ」
※このインタビューは、24日に実施しました。
(布施太郎 編集:田巻一彦)