『アパレル・サバイバル』
齊藤孝浩(日本経済新聞出版社/1500円〈本体価格〉)
今、激動の大変革期を迎えている小売業。なかでも、市場規模が縮小し続けているアパレル業界では生き残りをかけた熾烈な競争が繰り広げられている。「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」や「Amazon Fashion(アマゾン・ファッション)」などECサービスが台頭するなか、アパレル業界は今後どのような方向に向かっていくのだろうか。
アパレル業界では10年ごとにパラダイムシフト(認識や価値観が劇的に変化すること)が起きていると本書は指摘する。しかも、国内のトレンドは欧米から約10年遅れたトレンドであるという。
日本が「価格破壊時代」を突き進んでいた1980年代後半、米国ではGAPによる「SPA宣言」に代表されるように、SPA(製造小売)の時代が始まる。約10年後の98年、日本では「ユニクロ」の「フリースブーム」に代表されるSPA時代が到来した。その頃、欧米ではスウェーデンのH&Mがパリやニューヨークに上陸するなど、ファストファッションが席巻する。やはり遅れること10年、2008年にH&Mが日本に上陸し、日本でファストファッションが広まった。その頃、欧米ではすでにアマゾンを始め、EC企業が台頭し、オムニチャネルの時代が始まっていた。日本ではここ数年で、EC企業との競争が強く意識されるようになったばかりだ。
このように、日本は欧米の10年遅れでそのトレンドを追随しているというのが本書の主張だ。では今、欧米のアパレル業界では何が起きているのだろうか。
本書では今の欧米のトレンドとして、「さらなる低価格化」、「ウルトラファスト」、「ストアピックアップ」、「サステイナブル経営」などをキーワードに挙げて、それぞれ事例を交え、詳しく説明している。
これらのトレンドは数年後、おそらく日本で繰り返されるだろう。世界の最新トレンドを本書から学ぶことは、新しい時代に備えるための心強い武器となるはずだ。
(『ダイヤモンド・チェーンストア』2019年4月1日号掲載)