ロコンド代表取締役社長 田中 裕輔
プラットフォーム事業を、EC事業に次ぐ収益の柱に育てる!
EC開発の知見生かしたプラットフォーム事業
──プラットフォーム事業について具体的に教えてください。
田中 当社のプラットフォーム事業は、EC事業で培った知見やノウハウを活用して、ほかの企業のECサイトの開発や運営をサポートするというものです。
プラットフォーム事業では3つのサービスを提供しています。
1つめが、他社のECサイトの開発・運用を当社が代行して行う「BOEM(Brand’sOfficial E-commerce Management)」というサービスです。BOEMでは、当社の倉庫で商品撮影から在庫管理、物流までをサポートします。サービス利用企業の商品を当社の倉庫に保管し、自社ECサイトだけでなく、「ロコンド」のECサイトでも販売することが大きな特徴です。現在、サマンサタバサジャパンリミテッド(東京都/寺田和正社長)様やアルペン(愛知県/水野泰三社長)様など8社の運営を支援しています。
2つめが「BOSS(Brand’s OverallStrategy Support)」というサービスです。当社がサービス利用企業のECサイトの開発・運営を行うとともに、当社ECと在庫を共通化するBOEMに対し、BOSSでは実店舗の在庫を含めた、サービス利用企業の在庫すべてを当社との共通在庫にするのが特徴です。小売業は、商品を現金化するために在庫の回転率を上げることが非常に重要になります。アパレル関連の小売業の多くは、製造工場から仕入れた商品を自社倉庫にいったん保管したうえで、さらにEC専用倉庫に送ったり、店舗に配送したりしています。しかし、工場から受け取って配送する時間や保管する時間が長ければ長いほど、在庫回転率は下がることになります。
こうした状況を打開すべく、われわれは製造工場から当社の倉庫に着いた瞬間からオンラインで販売したり、迅速に実店舗に送ったりすることで在庫回転率を改善できるようにしました。このサービスは15年8月からスタートしたのですが、通常の店舗に配送するだけでなく、全国の百貨店にも送ることができる機能を付加したことで、導入した企業から高い評価を得ています。
3つめのサービスが、資本業務提携しているアルペン様と15年4月に共同開発した「LOCOCHOC(ロコチョク)」です。当社に預けた在庫商品をECだけでなくリアル店舗にも送ることができるのがBOSSのサービスですが、お客さまのご自宅に直接、配送ができるサービスがロコチョクです。
アパレル業界では、店舗に在庫できる数が限られているために、色やサイズにおいて欠品になるケースがよくあります。ロコチョクならば実店舗に在庫がない場合でも、お客さまが店頭にある専用端末で注文し、支払いを済ませれば、自宅で受け取ることができるのです。
(左)ECサイト「LOCONDO」では、靴をメーンにファッション関連の商品を約10万SKU取り扱う
(右)社内のコンシェルジュがお客の相談に電話やメールで対応する
──プラットフォーム事業に乗り出したきっかけは何ですか。
田中 プラットフォーム事業のコンセプトは、シンプルに言えば、在庫を共通化して、商品回転率を上げることです。当社は商品が売れた際に仕入れとして計上する消化仕入れを採用しているので、売れ残りを心配する必要はありません。ですから当社とすれば倉庫に在庫する商品は多ければ多いほどいいですが、アパレルメーカーや小売企業はそうはいきません。商品が売れ残ると収益を大きく圧迫します。
当社が在庫を増やすためには、多くの小売企業との取引が必要になります。そのため、小売企業を訪問して話を聞いて回ったところ、ある会社では「ECサイトを開発してくれたら在庫を預ける(BOEMサービス)」、ある会社では「在庫を預けるのは構わないので、それを実店舗へも配送できるようにしてほしい(BOSSサービス)」、「実店舗の欠品分のフォローをお願いしたい(ロコチョクサービス)」といったようにさまざまなニーズがあることがわかったのです。プラットフォーム事業の開発は、こうしたアパレルメーカーや小売企業の課題を解決する過程から自然発生的に生まれたものです。これは課題解決を基軸とする、私のコンサルティングの経験も関係しているのだと思います。
ECの取扱高の拡大に加えて、プラットフォーム事業の売上高も順調に伸びていることもあり、17年3月には物流拠点の移転・拡張を予定しています。倉庫面積は現状の約5000坪から2倍の約1万坪にする予定です。