ロコンド代表取締役社長 田中 裕輔
プラットフォーム事業を、EC事業に次ぐ収益の柱に育てる!

2016/06/13 00:00
Pocket

靴をメーンにバッグや衣料品、スポーツ用品などのネット通販(EC)サイト「LOCONDO」を運営するロコンド(東京都)。EC事業においては品揃えの幅を広げて取扱高を伸ばしている。また、小売業のECサイトの開発・運営や実店舗運営をサポートするプラットフォーム事業も軌道に乗りつつあり、2015年10月には創業以来、初めて単月で黒字化した。これからの成長戦略について、田中裕輔社長に聞いた。

聞き手=下田健司(ダイヤモンド・チェーンストア誌)

2015年10月に単月黒字化を達成

ロコンド代表取締役社長 田中 裕輔
たなか・ゆうすけ●2003年一橋大学経済学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。09年カリフォルニア大学バークレー校経営大学院でMBA(経営学修士)取得。同年、DeNA Globalにおいてマーケティング・製品担当上級副社長を経て、11年1月にジェイド(現ロコンド)の創業に参画。同年5月に代表取締役社長に就任(現任)

──ロコンドの立ち上げや社長に就任された経緯について教えてください。

田中 ロコンドの前身であるジェイドは2010年10月、ドイツのベンチャーキャピタル、ロケット・インターネットの100%出資の会社として設立されました。ロケット・インターネットは現在のロコンドと同様、靴や衣料品を扱うファッション系ECサイト「zalando(ザランド)」を運営しており、この事業を世界展開しようと日本、ブラジル、ロシアなどで同時期に事業をスタートしました。当社は会社設立後、事業展開を急ピッチで進めたものの、早々に資金が底をつく状況に陥りました。

 私は米国で経営学修士号(MBA)を取得後、ロケット・インターネットのインターンとして11年1月からジェイドで働いていました。インターンという立場ではあるものの、倒産だけはなんとか食い止めようとロケット・インターネットの社長との話し合いを行った結果、私が代表取締役を引き受けるならば追加投資するという承諾を得て、11年5月から社長を務めることになったのです。

 私自身は靴とファッションのECというビジネスに可能性があると考えていました。というのも07~10年に米国に留学していた際、靴とファッションのECサイト「Zappos.com(ザッポス・ドットコム)」の創業者であるトニー・シェイCEO(最高経営責任者)の話を聞く機会があり、このビジネスに大きな可能性を感じたからです。

 12年8月に現社名に変更しました。15年10月に初めて単月で黒字化を達成。16年2月期には取扱高が100億円に到達しました。取扱高100億円を損益分岐点と想定していたので、ようやく利益拡大の局面に入ったと考えています。

──事業展開はECがメーンになるのですか。

田中 ロコンドの事業は大きく分けて2つあります。1つめはEC事業、2つめがプラットフォーム事業です。現在の売上のメーンがECサイト「ロコンド」の運営・管理を行うEC事業で、プラットフォーム事業と合わせて売上高の9割以上を占めています。

 私は米国留学前、マッキンゼーの経営コンサルタントとして仕事をしており、たくさんの小売企業の店舗を実際に見てきました。多くの店舗のバックヤードを見てきて感じたことは、靴ほど「店舗販売には向かない」商品はないということです。靴は色やサイズのバリエーションがあるため、販売できるスペースの限られた店舗では置ける数が制限されてしまい、どうしても欠品になりやすい。ではECに向いているかといえば、試着ができないために購入に結びつけることが難しい、といわれていました。

 これらの問題点を解消した結果、靴を試着できるECサイトという独自性を打ち出すことが可能になりました。アパレル関連の小売業の売上高の多くは実店舗が占めており、ECの比率はわずか6~7%前後に過ぎないといわれています。ECでのファッション関連商品の購入についてアンケートを取ると、購入しない理由で最も多いのが「試着できないから」です。つまり、試着さえできれば、ECで購入するお客さまもいるということになります。

──靴以外にも扱っている商品はあるのですか。

田中 現在は靴だけでなく、バッグや衣料品、ほかにもゴルフクラブやテニスラケットなどのスポーツ用品まで扱っています。アイテム数は約10万SKU以上、当社倉庫の在庫は約100万ピースを数えます。

 これら全商品を試してから買えますし、一部を除いてサイズ交換はもちろん、返品も返送料無料で承っています。さらに、お客さまの疑問にお答えするため、午前10時から午後6時まで専任のコンシェルジュがお客さまからの問い合わせに対応しています。

 EC事業の売上高構成比は、靴が6~7割、バッグが2割、衣料品が1~2割、そのほかにアクセサリーなどの雑貨となっています。商品の価格帯は2000円台~10万円を超えるものまで幅広く、お客さまの1回当たりの購入金額の平均は約1万2000円です。

 当社は20代から60代まで幅広い年齢層のお客さまから利用いただいており、メーンの購入層はファッションに敏感な30~40代の女性です。この世代は小さな子供を持つ方が多く、店舗でゆっくり試着したくても子供と一緒では難しい。われわれはそうした悩みの解決をめざしています。
 

1 2 3
© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態