加藤産業代表取締役社長 加藤和弥
特定商社の色が強くなれば、デメリットのほうが大きい
中国で求められる日本の卸売業のノウハウ
──兵庫県を拠点に事業展開されていますが、やはり関西エリアにおける売上が大きいのですか。
加藤 売上として大きいのは関東です。関西で商売を始めて60年あまり(会社設立は1947年)、関東へ進出したのが1962年ですから、もうすぐ50年。年月としてはそれほどの差がありません。ただ、やはり同じエリアということで、とくに関西の小売業との結びつきが強いことが多いですね。
──昨年は、大手SMのライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)の配送や商品仕分けといった物流業務を受託されました。現在、SMからこういったニーズは増えているのでしょうか。
加藤 いいえ。以前に比べ各社の成長は鈍化していますし、一時期のブームからすれば、案件はむしろ減っているのが現状です。配送センターを持っていない大手小売業は、もうほとんどありません。現時点で施設を持っていない企業は、将来も持たないほうがいいと判断しているのだと思います。今後、物流センターの処理能力が限界に近づいているとか、物流センターの立地を変える必要があるといった事情がなければ、そういった案件はあまり増えないでしょう。
──国内市場はデフレ傾向が続き、売上を拡大しにくい環境にあります。長期ビジョンとして、売上高1兆円、経常利益130億円を掲げていますが、これから成長をどう図っていく考えですか。
加藤 新しい顧客を獲得することで売上を増やすという考え方は重要です。しかし売上は低迷している時期にあっては、それだけでは成長を続けることは難しいでしょう。やはり自分たちの売上を上げるというよりも、得意先や仕入れ先のお役に立ち、先方が売上を拡大するお手伝いをするという意識が必要なのだと思います。
──M&A(合併・買収)という手段についてはどのように考えていますか。
加藤 これまでの歴史を見ても、数十件のM&A案件を手がけています。ここ数年では、とくに大きな事例はありませんが、現在、連結子会社となっている企業についてはM&Aをした企業が少なくありません。もはや、M&Aは特別な手段ではなくなっており、それを使わないという理由はないという認識です。
──住友商事と共同で中国の食品卸売業の子会社に対して出資されています。今後、中国でのビジネスについて展望を聞かせてください。
加藤 同じ食品流通でも、中国と日本では大きな違いがあります。たとえば流通業界の商慣習という点では日本は特約店制度で、中国では代理店制度。消費環境という点では、日本はモノが余っているのに対し、中国はモノ不足に近い状況です。モノがないということは、売り手が強いわけで、日本とはパワーバランスがまったく違っています。
また中国においては、食品卸売業はまだ新しいビジネスで、20年そこそこの歴史しかありません。中国では、小売業の変化のスピードがかなり速いのが特徴です。その中で、日本の卸売業が持つノウハウへのニーズが増しているのも確かです。まだ時間はかかりそうですが、少しずつ伸ばしていければと考えています。